「陽和。腹減っているの。うん? なんか違
くない? あんたがそんなこと言うからじゃ
ないの」
 コバさんの言った言葉にくるみさんは反応
したが、彼を見てなんか違うと思ったのか反
論していた。
「はあ? 絶対ひよっち腹減っているって」
 彼女の言葉を認めないコバさんは否定し続
けていた。
 話が噛み合わないコバさんとくるみさんは
また言い争いを始めた。
 松岡さんは、終始黙り込んでいた。
 コバさんとくるみさんの言い争いは、一つ
のおやつを巡るようであった。
「あははは。お前らやっぱ最高だわ。ありが
とう」
 コバさんとくるみさんは、その言葉で振り
返った。
「どうした! ひよっち」
「陽和?」
「なんでもない。いや―お前らがおかしくて
な」
 彼は、ケラケラ笑っていた。
 コバさんは真面目な顔になり、眉をひそめ
た。
「……本当か? なんか、今日ひよっち変だ
ぞ」
 松岡さんの異変にコバさんはいち早く気付
いた。
「大丈夫。コバ心配しないで」
 彼はそう言って、コバさんは私を見てきた。
 私は、首を振った。
 多分、彼なりにコバさんには言わないほう
がいいと思ったのだろう。
 私も松岡さんに言わないことにしようと思
った。
「そっか。分かった」
 私を見て、コバさんは大丈夫と判断したの
か素直に返事していた。
 くるみさんは私を見て、何かに気づいてい
るのだろう。彼女は私に薄笑いをしてきた。
「……そう、それなら言いけど」
「まあそれより、夕食食べよう!」
 松岡さんは時計を見て、もう夕ご飯の時間
だと思い、提案した。
「え? もうそんな時間」
コバさんはすぐさま時計を見た。もう一八
時を回っていた。
「いいね! 勿論……」
くるみさんは松岡さんに言い、彼はため息
をして彼女に言った
「ビ―ルはあるよ」
 彼女は、よっしゃ―とガッツポ―ズをした。
 コバさんは、ビールあるの―と言いながら
奥の部屋に忍び足で行こうとしていた。
 それを見たくるみさんは、私のビ―ルだ―、
渡さない―と言い、ビールを巡ってダッシュ
で居間に入っていた。
「陽琉、みんなで一緒に食べよう! 今日は
ありがとう。来てくれて」
 松岡さんはいつも以上に優しく笑顔で微笑
んだ。
「はい」
 私は返事をして、私が思う優しい笑顔を松
岡さんにした。