「歩いてすぐのところだよ」
 彼はピヨもうすぐ着くから待ってろよと言
って、私に話しかけてきた。
「え―と、陽流さんだっけ?」
 彼は、私の脚から顔まで全身を見渡して言
った。
 な、そんな見ないでよ。
 私は顔を赤らませながら俯いていた。
「就活生?」
「は、はい」
「ス―ツ、俺のせいで汚くなったな。悪い」
 私は自分の全身を見た。
 今まで分からなかったが、脚には土がつい
ていて、ス―ツにも草があちこちに付いてい
て汚れていた。
「あ、大丈夫です」
 私は脚やス―ツを手ではらった。
「良ければ、俺の服を貸しますけど……?」
「いえ、悪いです」
「でも、そのスーツで歩くの?」
 う、図星だ。
 彼に苦笑いを浮かべた。
「……図星でしょ。着いたら、服貸すから」
 そう言った後、私を構わずにピヨと会話を
していた。
「着いたよ。この家だ」
 その家は古本屋と書かれていて、古ぼけた
看板が掲げられていた。その看板の下には、
何かが書かれているが字が薄くなっていてな
んて書いてるのか分からなかった。
 外観は、何年前に建てたのだろうか。看板
や玄関などがボロボロであった。
「古本屋?」
 彼はピヨを左手で持ちながらドアを鍵で開
けて言った。
「そうだよ、俺の家。仕事は、古本屋やって
んだよ」
 ガチャとドアを開けると、微妙に埃っぽい
匂いがした。
 ちらっと古本の棚を見ると
 近代文学、漫画、学術書、写真集、小説等
のある特定のテ―マに沿ってそろえていた。
 様々なニ―ズで揃えられていて、価値のあ
る本もあるように見えた。
 本がたくさん並べてあり、会計スペースや
自由に本が読めるようにテーブルがいくつか
あった。
 店の中は綺麗に本が並べられていて、ネコ
の写真がいくつか壁に貼られていた。
 まさに古本屋であった。
「入って。ピヨはおとなしくこれ食べてな」
 彼がポケットに持っていたと思われるえさ
をピヨに食べさせていた。
「陽琉さんは、そこに座って、待ってて」
 彼は私に言い靴を脱ぎ、居間があると思わ
れる所へ行ってしまった。
「あ、はい」
 左手でスカ―トをめくりあげて椅子に恐る
恐る座った。
 キョロキョロと周りを見渡して、テ―ブル
にはネコのグッズが沢山あった。