彼は林総理大臣に返事をしてから、テーブ
ルの方へ行った。私には、ここに座ってと促
してくれた。
「んで、話はなんですか?」
 松岡さんは椅子に腰をかけて林総理大臣に
言った。
「そんな怖い顔しないでよ、陽和」
「……別に」
 彼は厳格な顔をしていた。
「今日は大事な話があったから。太橋さんに
言って呼んでもらったんだ」
 私は何も言わず黙って座り、二人の会話を
聞いていた。
「……それでなに? 話って。俺は親父とは
もう話す気なんてなかったんだからね。太橋
さんがどうしてもって言うから」
「……陽和。本当に悪かった。陽和には本当
に悪いと思っている。私は総理大臣になれた。
お前にはあの家に戻ってきてほしい」
 私は唖然した。
 松岡さんにあんなことまでしてそんなこと
が言えるの?
 彼は目を丸くして、林総理大臣をただ見つ
めているだけであった。
「……おや……」
 松岡さんが林総理大臣を呼ぼうとした時、
私は口を開いた。
「あの林総理大臣。お言葉ですが、あなたに
松岡さんに家へ帰れという権利はないと思う
んですが」
 私は椅子から立ち上がって、総理という立
場など気にしないで林総理大臣に言った。
「さっきからいるけど、あなた誰だね?」
 ムッとした表情で林総理大臣は私を見てく
る。
「申し遅れました。私は小松陽琉です。ここ
でバイトしている者です」
 私は姿勢を正して林総理大臣を見ながら自
信溢れるように言った。
「そんな君がなんの権限で、私に陽和につい
て言うんだい」
「陽琉、いいから。黙ってて」
 彼は私に座って、口を慎めと言っているの
だろう。
 でも、そんなことより私は林総理大臣に言
わなければならないことがある。
 だから、松岡さんには悪いけどここは引き
下がれない。
「松岡さん。あなたが思っていること、はっ
きり言いたいんです。だから私に言わせて下
さい」
 彼は、少し黙って考えた。
 そして、決まったのか顔を上げた。
「分かった。陽琉が思っていることいいな。
俺は止めないから」
 彼は優しい言葉で私に言った。
「はい」
 私は笑顔で松岡さんに返事をした。
 返事をしたら林総理大臣に向き直した。
「林総理大臣。私は松岡さんに会って日が浅
いです。でも、これだけは言えます。松岡さ