行きたいので、行ってみることにした。
 就職は決まり、私のやるべきことは小説家
になることだ。
 だが、今は本などで知識を得ているが、後
は他にやることは何もないので行くことにし
た。
「こんにちは」
 古本屋『松岡』は、ネコカフェの工事は終
盤に突入していた。
 外観や壁紙など至る所ネコがいて、ネコ好
きにとっては良さそうな場所だ。
 だが、ネコが好ましくないと思っている人
は絶対控えた方がいいと思う。
「陽琉! こんにちは」
 松岡さんは、いつも通りにピヨを抱えて楽
しそうに出迎えてくれた。
「ネコカフェ、順調ですね。もう出来上がる
じゃあないですか?」
「ふふふ、そうなんだ。でも、順調し過ぎて
大丈夫か不安だけど……」
 楽しそうに彼は言っていたが、不安気な表
情にも見えた。
「よかったですね」
「それより、今日は帰りな」
「な、何でですか?」
 ふふふと楽しそうに言っていたが、誤魔化
しているように見える。
「陽琉、今日は用事があるんだ。帰ってお願
い」
 分かってほしいと必死に目で訴えている。  
 それだけで分かる訳がない。
「……それだけじゃ分からないですよ。言葉
に表してもらわないと」
 松岡さんは、ため息をついた。
「はあ、陽琉にはかなわないか」
 そう彼が言った瞬間、雷が鳴るかのように
ドアが開いた。
「陽和、お待たせ」
 そこには、林総理大臣がいた。
「親父」
「林総理大臣」
 林総理大臣の名前を呼ぶと、私はすぐに松
岡さんを見た。
「そう今日、用事があるっていたのは親父の
こと」
「何でですか? 林総理大臣に用があるんで
すか?」
 彼は真剣な眼差しで私を見てきた。
「苦しくてもね。大人の事情で向き合わなく
ちゃいけないんだよ」
 そう彼は言って、苦しそうに鼻で静かに深
呼吸をして誰にも悟られないようにしている
みたいであった。
「……分かりました。ですが、私は帰りませ
ん。ここに居させてもらいます」
 私は彼を置いて、ここを去ってはダメだと
悟り、仁王立ちで彼の前に立った。
「……陽琉……分かった。いいよ、居て」
「ありがとうございます」
 呆れた顔で彼は私を見てから、安心したの
か表情が柔らかくなっていた。
「陽和。いいか?」
「ああ、いいよ」