不安で、不安で仕方ない。その不安が分か
っているかのように、松岡さんは何故本当の
自分を引っ張り出してくれるのだろうか。
「陽琉。無理に頑張らなくていいの。自分な
りの答えを探せば……」
「自分のごだえ?」
 私は泣きながら、彼に話しかけた。
「そう。自分の答え。自分が今やるべきこと
は何か。やらなくてはならないこと誰にしも
あるはずでしょ」
 ニコリと彼は私に笑いかけて、私の頭を撫
でた。その言葉が欲しかったんだ、私。
 無理に頑張らなくていい。その言葉だけで、
心が掃除された気分になった。
「……やらなくてはならないこと……ですか。
自分が今やるべきこと。そうですね。なんで
もう松岡さんにはこう話しちゃうんですかね」
 私は涙を拭ってから上目遣いで松岡さんを
見た。私の頭を撫でていた彼の手が急に止ま
った。
「……はあ、その顔をやめてよ。俺が苦しく
なるから」
「え? どういうことですか?」
 彼は、両手で顔を隠していた。
 私はなんのことかさっぱりわからないので、
はてなマークが頭の中を遡っていた。
「……なんでもないよ。それよりも陽琉の気
持ちは決まった?」
 ゴホンと咳払いをして、彼は私の気持ちを
見透かしているように言ってきた。
「はい、決まりました。なんかお騒がせして
申し訳ありません!」
「いいんだよ、人間はみんな助けあいながら
生きているんだからね」
 そう言ってから、彼は私に最高の笑顔で笑
いかけてきた。
 彼の笑顔は最高であったが、誰かに覚えら
れたような笑顔をしていた。
 彼らしさがなかった。
 彼が笑いかけたら、松岡さん―と呼ぶ声が
外から聞こえた。ネコカフェを工事している
人が呼んでいた。
 大きい声で彼は、は―いと言い、私にゆっ
くり休んでてと一言放ってから、靴を履き行
ってしまった。
 カバンから鏡を出して、自分の顔を見た。       
 その顔は腫れていて、泣いたとわかるほど
の腫れ具合であった。
 それぞれの夢は、自分のペースで進むもの。
 だから、焦らなくて大丈夫。松岡さん、コ
バさん、くるみさんはそのことを言いたかっ
たのだ。
 夢はまだまだ未知数で信じられないけど、
私は私なりの道を歩むとこの日誓った。