「自分で考えてみたら? 俺は知らない」
 コバさんは、意地悪そうな顔で舌を出して
立ち上がり居間へと行ってしまった。
 教えろよと松岡さんは言って、テ―ブルに
座り考え込んでいた。
「陽琉、本当にどうしたんだ?」
 彼の顔は、本当に私のことを心配している
ようだった。だが、言えるはずがない。
「だ、大丈夫です。きょ、きょ、きょうは失
礼します」
 私は礼をして、逃げるように帰った。
 外に出て、私は近くにあるバス停まで息を
切らして足を止めずにダッシュで駆けていた。   
 自分の手で頬を触ったらまだ赤かった。
 このモヤモヤはなんなのか分からなくて悩
んでいたが、今分かった。
 そう私は松岡さんに恋をしたんだ。
「もう、ヤダ。なんでよ、もう恋なんてする
もんじゃないのに」
 私は空を見上げた。さっきは雨が降ってい
なかったのに、小ぶりに雨が降っていたみた
いだ。
 歩いている人は、傘をさすのをやめて傘を
閉じていた。
 上を見上げたら眩しくて、目が開けられな
いほどの晴天に変わっていた。
 私の気持ちはこの晴天みたいに輝いている
はずなのに、何故か不安な気持ちでいっぱい
であった。
 その時は、本当に仕事が決まるのかと恋に
対して臆病な私に恋をして実るものなのかと
いう不安の連鎖が連なっていたのだ。
 夢を叶えるというのは、どんな手段でも叶
えるべきなのだろうか。