コバさんは頬杖をつき、納得していないよ
うな表情をして黙っていた。
「……言いたいこと分かった。ひよっちが、
それでいいなら俺はもうなんの反論もしない。
でも俺から言わせて。本当にこれでいいの?」
 頬杖をするのをやめて彼は真っ直ぐに松岡
さんを見ていた。
 その様子を私は交互に見ていた。
「……ああ、俺が考えたことだから。はっき
り言って、ネコカフェを作るのは、親父は関
係ないし、ただネコカフェを作るのにあたっ
て了承してくれただけだ」
「……そうかな? それだけならいいけど」
 コバさんは、本当? と疑っている顔をし
ていた。
「大丈夫だ! 心配するな」
「……ひよっちがそう言うなら」
「はい、この話は終わり。だから、そんな顔
するな」
 コバさんは、まだムッとした表情を浮かべ
て、松岡さんを凝視していた。私はコバさん
を慰めるためにこう告げた。
「大丈夫ですよ、松岡さんなら。コバさん」
「……本当? ひよっち」
 松岡さんは頷いた。
「ああ、だから大丈夫」
「分かった。でも、なんかあったら俺に相談
しろよ」
 松岡さんは笑顔で微笑んだ。
「分かった、ありがとな」
「ふん、別に」
 コバさん、素直じゃないんだから。
 私はコバさんと松岡さんの様子を見て、ク
スっと笑った。
「なんだよ!」
「なんでもないですよ。ふふふ」
「陽琉が笑うなんてな。あはは」
 松岡さんは、笑っていた。それを見て、コ
バさんは、安心したのか彼の笑いに釣られる
かのように笑っていた。コバさんの笑顔は、
優しくて、太陽のように光っていた。
 松岡さんとコバさんは、お互いを大切にし
ながら接しているんだ。
 松岡さんの知らなかった過去。
 あんな顔をする人なんて、思わなかった。
私ならあの人を笑顔にするのに。
あれ? え? いや、まさかね。
私は松岡さんを見た。
「どうした?」
「いや、なんでも……」
「顔赤いぞ」
 そう言って、松岡さんは私に近づき私のお
でこを触った。
「以上ないな。うん? また、赤くなってる
な、大丈夫か」
「……」
「ふ―ん、なるほどね」
「え? 何がコバ」
「ひよっちはそういうの鈍感だからね」
「だから何が」
 必死な顔をして彼は知ろうとしていた。