まった。 どこかとは、テレビで見たのだ。
 松岡さん達は、私を見ていた。
 私の大きい声に反応して、コバさんと昇哉
さんは、なんのことだと言わんばかりに立っ
てドアの方に歩み寄ってきた。
「……親父、なんで……ここに。太橋さん、
どういうことですか?」
 松岡さんは、太橋さんを怒ることもなく、
今起こったことが信じられないのか目をこす
っていた。
 くるみさんが言っていたことは事実だった
のだ。林総理大臣が松岡さんの父親。
「聞いてくれ、陽和さん。俺は会社の経営に
は詳しいけど、ここでネコカフェと古本屋を
融合させるのはどうかなあと思ってたの。で
も、陽和さんに言わなかったけど、総理とは
昔から付き合いがあってね。総理にそのこと
について言ってみたんだ。そしたら、いいん
じゃないかって。総理が決めたことではない。
ただ、ネコカフェというものに俺が興味を示
すようになったんだ」
 太橋さんはそう言ったが、それはまるで総
理が決めたことのようだった。
 彼は林総理大臣を見て話をして下さいと言
っていた。
「なんだよ、親父。なんでなんだよ。なんで、
いつも。親父が」
 松岡さんは、髪だけは整えられていたが、
顔は我を失っているようだった。
「陽和」
「俺の名前で呼ぶな」
「お父さんは、お前に悪いことをした。謝り
たい、それだけだ。償いとして、ネコカフェ
は立ててもらいたいと思っている」
「……」
 松岡さんは、黙っていた。
 黙っていたら、彼の横をコバさんが通りす
ぎた。
「コバ……いいから」
「よくない。ひよっちは黙ってて」
 コバさんは、強気な言葉で彼に言うと、林
総理大臣に話しかけ始めた
「総理いや、林さん。ひよっちには、一切近
づかないって約束しましたよね」
「……ああ。お前は、あの時の少年か。大き
くなったな。確かに、約束した。でも、親だ
から顔見たいのは当然だろう?」
「……お前はひよっちの気持ち分かってない
んだよ。才能見極め人って称されていたひよ
っちは、会社に勤めてからネコカフェの夢が
諦められなかった。だから、会社を辞めてか
ら、人望の厚かった会社に片っ端に電話した
んだよ。従業員が揃ったら、夢を叶えたい従
業員の思いを叶えてくれって。何度も頭を下
げて、だから今の店があるんだよ。お前は知