昇哉さんは、松岡さんに案内された。前に
くるみさんと話していたテーブルで話し合い
をしているのだ。
 この前のくるみさんと昇哉さんの情景が頭
から離れない。彼女と彼の関係が気になって
しょうがない。
 松岡さんは呑気に胡座をかいて、ピヨとじ
ゃれていた。
 コバさんと昇哉さんは、真剣に話しあって
いるのに、この人は。
「松岡さん、ピヨとじゃれあってないで。な
んかしたらどうですか?」
「今してるよ。ピヨとじゃれ合ってるよ」
「いや、そういうことじゃなくて。古本を整
理するとか、なんかあるでしょ」
「……陽琉。俺がすることは夢を叶えてやる
ことなんだよ。それを見届けること、それだ
け。古本を売るのは大事だよ。生活かかって
るしね。大事なのは、人生で何を成し遂げる
かだよ、陽琉」
 私は松岡さんが言ったことを黙って聞いて
いた。彼に言い返すことが出来なかったから
だ。言っていることは正しいかもしれない。
 はっきり言って、彼はこの古本屋で生活出
来ているのかと他人であるが心配になる。
 ましてや、他人に夢を叶えるためにお客様
を呼んで本を買ってもらい、お金は入ってく
る。
 だけど、コバさんやくるみさん、私の分の
バイト費までやったら、無くなるのでないか
と思えた。
「陽琉? どうした? 大丈夫か」
「あ、はい。大丈夫です」
 私がそう言いかけた時、ガラっとドアが開
く音が聞こえた。
「今お取り込み中なんですが、何か……」
 松岡さんは、遠慮がちに言った。
「陽和さん、昨日はどうも」
 見知らぬ太めの男は、礼をしてアナウンサ
―みたいに発音がはっきりしていた。
「太橋さん、昨日はありがとうございました。
あ、冷えてるビ―ルあるんで、呑んでいきま
せんか?」
「いや、今日は遠慮しておくよ。すぐ済むか
ら。総理入ってきて下さい」
 太橋さんはそう言って、後ろを振り返り、
総理? という人を呼んだ。
 あだ名かな? まさか、本当の総理とか?
そんな訳ないよね。
「だから、総理って呼ぶのやめないか、林さ
んにしてくれ」
 心の中で呟いていたら、そこにいたのは小
柄な男性であった。
 どこかで見たことがある。昨日どこかで。
「あ、林総理大臣!」
 あ、と口にあて、思ったことを口にしてし