声が高いと思ったら、その人の後ろに隠れ
ていたのは、女の子。
 パパということはその人の娘―! 
 な、何故ここに。
「あ、すいません。わたくしは、こういう者
です」
 男性は、私に名刺を渡してきた。私はその
名刺を見た。すると、株式会社BOY。
 ここの会社って、あの有名なあの出版社だ
よね。
 やはりこの男性は出版社の方だった。
 この会社を見て、私が驚くのも無理もない。
 今期新しくできた会社である。新しく出る
度、本の内容が今まで見てきた価値観とは違
い、若者中心に話題沸騰なのだ。
 一番人気なのが『若者』である。
 単語としては、至って普通。
 だが、その内容が衝撃的だ。
 著者は若者の気持ちが分かっているのかと
いうくらいに書かれていた。
 私はコンビニで立ち読みしたくらいだが、
パラパラと開いたところ、心を揺さぶるよう
な言葉が書かれていた。
 あなたは、目に見えていない世界をきちん
と見ていますか? 見ていたら、それはあな
たの世界のひとつです。
 コンビニに行く前は、ある会社の面接をし
ていた。面接が全然ダメだったため、それを
見た瞬間、私は涙が零れ落ちそうになった。
 ダメダメな面接は、最後の質問で起きた。
 面接官が私に聞いてきたのは、特技はあり
ませんかという単純な質問であった。
 私は特技なんてなかったから。とっさに思
い出したことを言った。
 早口言葉。
 昔から得意だったと思っていたので、特技
として言ってみた。
 だが片言で全然早口になっていなかった。
面接官一同。
 真顔で私を見て、とても良かったです。で
は次の方どうぞと言い、私の面接は終わった。
 とても良かったです。
 ただのビジネスの褒め言葉に過ぎない。
 その事もあり、あの言葉に目を奪われた。
だから、あの会社がきたのは偶然なのか?
 まさか、そうなるように人生はなっている
のか? とさえ思ったのだ。
 松岡さんのつてだと言っていたけど、彼と
会ってから私が会ったことない人ばかりに会
っている。 考えて見たら、凄いことなのだ。
 そう考えていたら、男性が話しかけてきた。
「……大丈夫ですか?」
「あ、はい」
「何回呼んでも返事なかったので」
 男性は、心配そうに私を見つめて右手で頭
を掻いていた。