なんて、無茶なことを。
 男の人ってなんでそんなことするのかな?
 まあ、子どもの頃はそんなもんか。いや、
でも仲良い男子でもそんな遊びしてたっけ?
 私が知らないだけか。
「それで、今は?」
 ヨイショと立ち上がり彼は、一瞬私を見て
言った。
「……分からない。一年会ってなかったから
な。心境も変わるかもな。でもあいつが戻っ
て来れるように、ここの従業員として、籍は
おいてたんだ」
「……コバさんはその一年何をしてたんです
か?」
「カメラの修行。カナダだっけな。一人でカ
メラの腕極めるって言って。それきり、帰っ
て来なかった」
 少し寂しそうな表情を浮かべて、強く瞼を
閉じていた。
「……そうだったんですか」
 瞼を開くと松岡さんは口を開いた。
「あ、悪い。仕事中だったよな。続けてくれ」
「……コバさんは、諦めてはないと思います」
 私、何言ってんだ。
 そんなこと思ってないくせに。
「……本当かな?」
 私は、はいと答えた。
 嬉しそうに松岡さんは微笑んでいた。
「そうだな、うん。心配することないよな。
ありがとうな、陽琉」
 そう言って腕を組みながら頷き、いつもは
揃えていない靴を珍しく綺麗に揃えて奥の部
屋に戻っていた。
 その後ろ姿を見送って仕事に戻った。
数時間後
 松岡さんと私しかいない古本屋に一本の電
話が鳴った。
 プルプル プルプル
 それに気づいた松岡さんは、段差がない所
でこけそうになりながらも慌てて靴を履いて
会計場所の隣にあった電話機に出た。
 ガシャ
「はい、古本屋『松岡』です。あ、先日はお
世話になりました。あ、いえどうも。はい、
あの件について。あ、え? 本当ですか。は
い、ありがとうございます。はい、ではお伝
えしておきます。失礼します」
 ガチャと電話を切った。
 彼は、満面な笑みで私に言ってきた。
「陽―琉。ちょっと来て」
 彼は人差し指でちょいちょいとこっちへ来
てアピールをしてきた。
 私は、古本の整理をしていたので、駆け足
で彼の所へ行き話しかけた。
「なんですか?」
「陽琉、よく聞いて。明後日までに陽琉が書
きたい小説を書いてきて」
「はい? なんで明後日まで小説書かないと
いけないんですか?」
 松岡さんは、よく聞いてくれましたという