そんなの私も論外だわ。
 ひとりになったので、誰にも分からないよ
うに舌打ちをした。
「陽琉―!」
 後ろから声がした。
 松岡さんとコバさんが居間から出てきた。 
 昨日来たくるみさんのお客様から、珍しく
本を売ってくれたので、松岡さんが値段を付
けてくれた本を棚に入れていた。
 くるみさんのお客様は、一ヶ月に一回に来
る予定だった。
 だが週二回は私の計算では来ている。写真
を撮るのではなく、ただ話をするだけだ。
 これで、夢を叶えられるというのか。
「な、なんでしょうか?」
 私は松岡さんの声に反応して聞いた。
「あのさ、陽琉。コバがね、陽琉が女性を紹
介してくれないと嘆いてるんですがどうした
らいいだろう?」
 知るか! そんなもん。
 勝手にしてろと思ったが、心の声が聞こえ
ないように平然とした声で言った。
「嫌それは仕方ないですよ。匂いフェチなん
ですから」
 それを見ていたコバさんは、面白くなさそ
うに拗ねていた。
 松岡さんは、腹を抱えて笑っていた。
「あはは。はあ、おもしれ―」
「なんですか?」
「こいつ、女性にそんなこと言われたことな
いんだよ。こんな服着てるけど、外見だけは
いいからさ。いつも女性にモテるし。近くに
接近されると喜ばれるんだよ。でも、陽琉は、
違かったよね」
 コバさんは居間で黙ったまま畳の上に座っ
ていた。
「だから、こいつちょっと戸惑ってんだよ」
「そうだったんですか」
 全然戸惑っているように見えないんですけ
ど。ってか、それでよく女性喜ぶなあ。    
 私には理解不能だ。
「でも、カメラマンという夢があるから。諦
めないと思うよ。女性もカメラも」
 カメラマン。
 カメラマンになりたいのか。
 女性については置いといて、やはり夢があ
る人がここで雇っているんだなと感じた。
「コバさんも夢があるんですね?」
 松岡さんはうん? と少し間をおき返事を
した。
「……そうだよ。ここは、夢がある人しかい
ないからね。夢を見るということは、大事だ
からね」
 松岡さんは、ニコっと笑顔で言った。
「夢は、見るもんじゃねぇ―よ!」
 コバさんは立ち上がり、透き通っていた声
からいきなり雷が落ちたかのように声を荒げ
た。
「急になに言ってんだよ。夢は見るもんだろ