小説家になりたいか分からないって言って
いるのに、松岡さんは勝手に話進めて。
「……本当に大丈夫だから、初めて話した時
から陽琉なら大丈夫って思ってるから」
 松岡さんは、私の気持ちを察して優しい言
葉をかけて、目が小さくなり歯が見えるほど
笑顔で私に微笑んできた。
 その笑顔にドキっとして、松岡さんから目
を逸らした。
「なんで目逸らすんだよ!」
 だって、あなたが最高の笑顔を私に微笑む
から。
「べ、べつに意味はありません」
「そう。ならいいけど。陽琉にはあの古本屋
で頑張ってほしいんだ。いろんな意味で」
 いろんな意味。私の目的は、夢を叶えるた
めだけじゃないの?
「……分かりました」
「じゃあ、俺はあの広い草原行くから。ここ
までな。気を付けてな! またな」
 松岡さんは私にそう言い、ピヨとあの広い
草原に向けて歩き始めた。
 その後ろ姿は、あどけない子供っぽさを残
しつつも頼もしい背中であった。
 夢。みんながなりたいと信じている夢。
 その夢を実現できるように行動している。
 必ずしも夢が実現できる訳ではない。
 私はそれを知ってる。
 信じることは大切だが、信じてもダメなら
諦める勇気も人間は必要だ。
 あの人達は、諦める勇気を知らないのだ。    
 だから、そんな希望を持っている。