松岡さんは、少し微笑んで答えた。
「大丈夫だよ、心配しないで。あ、そうそう
言い忘れてたけど、この店の従業員はね。陽
琉含めて、三人だからね」
 私含めて、三人か。
 くるみさんと私、後は誰だろう?
「……帰り送っていくけど?」
 松岡さんは、私と話している間にいつの間
にか両手にピヨを抱えていた。
「いえ、大丈夫です」
「いや、ピヨの散歩しなくちゃ行けないから。
送るよ」
 私にそう言って、ピヨを連れて私達は外に
出た。
「そういえばピヨ、店にいなかったですけど。
何処に行ってたんですか?」
「本当はね、ひと時も離れたくないんだよ。
まぁこのネコのストラップ持ってるから大丈
夫だけどな」
「なんで、ネコのストラップ持ってるから大
丈夫なんですか?」
 カバンに付けていたネコのストラップを左
手で掴んで、懐かしそうに彼は眺めていた。
「俺は、ネコとずっといないとじんましん出
来ちゃうの。この前は仕事でネコ持ってたら
怒られたからね。その時は俺の友達に見ても
らってるよ。一番信頼できるからね。店にい
るとどっか行っちゃうし、ヤダから」
 ピヨを仕事場に持って行くのはどうかと思
うが、やっぱり松岡さんは、自分でピヨを守
ってやりたいんだな。
 店にいる時は、私がピヨを見守ってあげら
れるのに。まだ、私信頼されてないな。
「そうだったんですか」
「あ、今日いいことあったんだ!」
「なんですか?」
「内緒!」
 また内緒か。私には言えないことなのか。
「あの、松岡さんって夢あるんですか?」
 何故か分からないが、突然そんなことを聞
いていた。
「……くるみから聞いたのか。あるよ。ネコ
カフェを作ること」
 ネコカフェ?
 考えていることとまるで違ったので動揺し
た。
「なんで、ネコカフェなんですか?」
「決まってんじゃん。ネコたくさん飼いたい
し、ネコが幸せになってもらえるようなカフ
ェ作りたいの!」
 ネコが沢山いて、幸せなカフェを作りたい
のか。
「それが松岡さんの夢ですか。素敵ですね。
私、小説家になりたいのかまだよくわからな
いんです」
 私は小声で松岡さんに聞いた。
「大丈夫。陽琉は、小説家になれるよ。まだ、
何もしてないでしょ。俺が、サポ―トしてあ
げるから。一緒に頑張ろう!」