それに気づいたのか彼女は私に言ってきた。
「驚いた? やっと、この店の仕組み分かっ
た?」
 いや、分かるはずない。
 くるみさんが、モデル事務所と思われる人
に写真を撮られて、事務所に入る、入らない。
 最後には古本を買う。分かるはずがない。
「いや、分からないです」 
くるみさんは、あなたバカね―と言葉は厳
しかったが、眉毛がタレ下がり優しい目をし
ていた。
「えーとね、この店はね。夢を提供してくれ
る場所と言ったじゃない」
「はい」
「それでね、ここに来るお客様は、全て私達
の夢を叶えてくれる手助けしてくれるの。私
の場合は、モデルの事務所に入りたいんだけ
ど……やっぱり、大手の事務所に入りたいか
らね。中々入れないんだよな……」
 髪を右耳にかけて少し悲しい顔を浮かべな
がら彼女は私に言った。
「はあ」
「えーと、まあつまりね。私の場合は、事務
所の人が来てくれて、私の写真を撮ってくる
んだけど。それを社長に見せて、事務所に入
れるけど……大手には一回にも引っ掛からな
いんだよね。子会社は、呼ばれるんだけどね。
だから、あなたもこの場所でチャンスが掴め
て、お金が貰えるのよ。一石二鳥でしょ」
「……でも、なんでお客様はこんな小さい古
本屋なんかに来るんですか? しかも、こん
な場所で」
 腕を組み彼女は私をジッと見てきた。
「……それは、私が教えることじゃないね。
陽和の行動を見れば分かるよ」
 そう言って、古本を探している中年集団と
昇哉の元へ一人ひとりに声をかけた。
 私はゴミを取り終わり、近くにあったちり
とりでゴミを取った。それを終えて、私は古
本の整理をし始めた。
 それを見ていたくるみさんは大きい声で、
こっちに来てという合図を右手でしていた。
 早足で彼女の所へ行くと中年集団と昇哉が
古本を買う所であった。
 会計するために私は呼ばれたみたいだ。
「手伝って! やることは分かってると思う
けど」
「はい」
 私は急いで、本を会計し始めた。
 それを見ていた早下さんが声をかけてきた。
「君も、夢を追っているのかい?」
 早下さんは、この店が熱いのか額の汗を右
手に持っていたハンカチで拭き取っていた。
 ハンカチで拭ったあと、目を細めて私に聞
いてきた。
「はい、まあそうですね」