哉は
「お前ら、まだ、くるみはまだまだだぞ。甘
いんじゃないか? ポージングちゃんと見た
か。ちゃんとやっているようだが、あんなポ
ージングは不自然しすぎる」
 くるみさんがやったポージングは、右手を
腰につけたり、可愛い顔をしてみたり、モデ
ルだからいろいろな表情や仕草をしなくては
ならない。
 だが、昇哉は不自然だと言う。
 私には理解できない領域だ。
 中年集団の一人は、口を開けたまま呆然と
昇哉を見上げていたが、早下さんだけは反論
した。
「昇哉さん。いつも言ってるけど、くるみち
ゃん頑張ってるからね。メイクだって前より
はよくなったし、ポージングだってね、最初
よりは」
 早下さんはそう言い、間を置かずに昇哉は
言った。
「いや、まだだな。くるみは俺の事務所にま
だ相応しくない。後、お前らの事務所にもな。
まあ、俺の判断は社長公認だからな」
「昇哉さん、そんな事毎回言って。くるみち
ゃんは、俺の事務所入れますよ―。まあくる
みちゃんが了承するか分からないですけど」
「勝手にしろ! 俺は帰る」
 昇哉がそう言い、カバンを肩にかけて帰ろ
うとした時だった。居間からくるみさんが出
てきた。
 中年集団は、だ、大丈夫かなと呟いていた。
「昇哉」
「なんだよ」
「もっと私頑張るから。だから、本だけは買
っていてね?」
 満面な笑みでくるみさんは昇哉に言った。
「……はあ、それは分かってるよ。いつもの
ことだろ?」
 昇哉は、くるみさんの笑顔に降参したのか
ため息をつきながら言った。
「……ありがとうございます!」
 くるみさんは礼をして、笑顔で答えた。
「じゃあ、本選びますか」
 カバンを肩にかけてから昇哉は後ろを振り
向き、中年集団に声をかけた。
 中年集団もよし、本買うか―と言い、古本
の棚を見始めた。
「……なんなんだ。これ?」
 中年集団と昇哉が古本を選び始め、何を読
もうか考えていた。私はほうきを片手にその
風景を見て呟いた。
 そう言った途端、くるみさんは腕を組みな
がら私の近くにやってきて言った。
「どうだった? 私のポージングは」
 くるみさんのポ―ジングは凄かったよ。で
も、私が知りたいのは、今あった出来事だ。
 あ、はあと私は彼女に言い、愛想笑いを浮
かべた。