胸ポケットに煙草があったのかライターを
開けて煙草を吸い始めた。
「いや、その……」
私自分もよく分からない。行きたくなかっ
た? まさか。
すごい、嬉しかったし。面接落ちまくって
たのが受かって嬉しかったし……。
あれ? 私、何のために就活してたんだっ
け。
私は俯き太ももに手を置き、拳を握りしめ
て考えた。
それでも、分からなかった。
「……行きたくなかったのか、陽琉は」
「……いや、そういう訳ではないです。でも、
自分が何をしたかったのかよく分からないで
す」
松岡さんは息を吐き捨ててから、私にこう
言った。
「陽琉は、夢はあるか?」
夢。夢か、昔はあったな。ケ―キ屋さん、
自分で言うのは恥ずかしいけど芸能人にもな
りたかった。
……小説家。誰にも言えてないけど、人生
の中で一番夢を叶えたいと思えた職業。
小説家なんてなれるはずもなく、公募を受
けるも落選を繰り返していた。
当たり前だ。主人公の苦悩や葛藤が伝わっ
てこないからだ。
この時から親や友達の目を気にして、自分
の夢を言わなくなった。
昔のこと。
昔のことのはずなのに、何でだろう。夢っ
て聞かれると、素直に答えたくなる自分がい
る。
「……夢ですか……夢は小説家」
松岡さんは黙って聞いてくれた。
「へぇ―、小説家。なんで小説家になりたい
の?」
息を吐いて煙草を吸って私の夢なんかを聞
いてくれた。
「……昔、趣味で小説を書いていたんです。
それで、友達に小説を見せたら、面白いと反
響があって調子に乗って、公募を受けたんで
す。でも、結局ダメだった。私は、元々そん
な文章能力もないし、相手に伝わるような才
能持ってなかったんです。小説家という夢は
昔の話ですから」
私はまた下に俯き落胆していた。
「……昔の話? 才能なんて誰が決めんだよ。
公募受からなかったのか残念だ? でもな、
文章能力とかそんなもん別にどうでもいいと
思うぜ。相手に何を伝えたいか。陽琉自信、
その本になんのメッセージを伝えたいかを伝
えればいいだろう。この古本屋だって、誰か
に想いを伝わって、心に残ればという思いで
本として売ってるんだ。だから、陽琉の思う
ことを書けばいいと思うよ」
煙草を吸い終わったのか彼は立ち上がって、
開けて煙草を吸い始めた。
「いや、その……」
私自分もよく分からない。行きたくなかっ
た? まさか。
すごい、嬉しかったし。面接落ちまくって
たのが受かって嬉しかったし……。
あれ? 私、何のために就活してたんだっ
け。
私は俯き太ももに手を置き、拳を握りしめ
て考えた。
それでも、分からなかった。
「……行きたくなかったのか、陽琉は」
「……いや、そういう訳ではないです。でも、
自分が何をしたかったのかよく分からないで
す」
松岡さんは息を吐き捨ててから、私にこう
言った。
「陽琉は、夢はあるか?」
夢。夢か、昔はあったな。ケ―キ屋さん、
自分で言うのは恥ずかしいけど芸能人にもな
りたかった。
……小説家。誰にも言えてないけど、人生
の中で一番夢を叶えたいと思えた職業。
小説家なんてなれるはずもなく、公募を受
けるも落選を繰り返していた。
当たり前だ。主人公の苦悩や葛藤が伝わっ
てこないからだ。
この時から親や友達の目を気にして、自分
の夢を言わなくなった。
昔のこと。
昔のことのはずなのに、何でだろう。夢っ
て聞かれると、素直に答えたくなる自分がい
る。
「……夢ですか……夢は小説家」
松岡さんは黙って聞いてくれた。
「へぇ―、小説家。なんで小説家になりたい
の?」
息を吐いて煙草を吸って私の夢なんかを聞
いてくれた。
「……昔、趣味で小説を書いていたんです。
それで、友達に小説を見せたら、面白いと反
響があって調子に乗って、公募を受けたんで
す。でも、結局ダメだった。私は、元々そん
な文章能力もないし、相手に伝わるような才
能持ってなかったんです。小説家という夢は
昔の話ですから」
私はまた下に俯き落胆していた。
「……昔の話? 才能なんて誰が決めんだよ。
公募受からなかったのか残念だ? でもな、
文章能力とかそんなもん別にどうでもいいと
思うぜ。相手に何を伝えたいか。陽琉自信、
その本になんのメッセージを伝えたいかを伝
えればいいだろう。この古本屋だって、誰か
に想いを伝わって、心に残ればという思いで
本として売ってるんだ。だから、陽琉の思う
ことを書けばいいと思うよ」
煙草を吸い終わったのか彼は立ち上がって、