その服はすぐに役立つことになった。
「今週末、出掛けないか」
 快に誘われたとき、すぐにわかった。
 これは『出掛ける』というか『デート』だ。
 その証拠に快はちょっと気恥ずかしそうな顔をしていた。
「う、うん! いいよ」
 特に予定もなかったので美久はそのまま頷いた。
 一緒に帰る道の途中だった。今日は図書室で待ち合わせをしたわけではないが、お互いの部活がないときや、もしくは早く終わったときなどは一緒に帰るようにしていた。
 もう恋人同士なのだ。一緒にいられる機会があるならいくらでも一緒にいたい。
「そうか! ありがとう。どこか行きたいところとかあるか」
 隣を歩く快に聞かれたけれど、美久が行きたいところで、快も行きたいであろうところといえば……。
「本屋さん、かな」
 美久の言葉に、快はくすっと笑った。美久の思ったことがわかったのだろう。
「そうだな。とりあえずそこはおさえとかないとだよな」
 そんなわけで本屋さんをメインに、ほかにも近くのお店などで遊ぼうということになる。
 決めたのは電車に少し乗ったところにある大きめの街の本屋さん。
 本屋さんなんてどこにもあるし、なんなら快と初めて外で出会ったところのお店でも良かったのだけど、快に「実はリニューアルしてから行ったことがなくて、行ってみたかったんだ」と言われてしまえば美久も興味が湧いた。
 本屋さんの建物はかなり古いものだったらしく、一年ほど前に建て直しかなにかがされていたらしい。ずっと工事中のシートがかかっていた。
 でももう営業再開して半年以上経つ。すごく混んでいるということはないだろう。
 よってそこへ行くことに決めて、ほかにもどこかで遊ぼうかということになったのだけど、二人とも詳しい街ではない。近くに用事がないと行かないようなところなのだ。
 なので調べてみることにした。
 駅前の広場のベンチに座って、スマホで検索する。夕方だけれど、それほど寒さは感じなかった。
 だって美久のすぐ隣には快がいてくれるのだから。くっついているというほどではないが、そばに座っていてくれるだけであたたかいものが伝わってくる。

 『タピオカのお店』
 『カフェ』
 ……『猫カフェ』?

 あれこれ検索しては検討していく。
 美久にとってはどれも魅力的だった。快と行けるのだ、どこへ行ったって楽しいだろう。
 初めてのデートだ、どうしてもどきどきしてしまうだろうけど、素晴らしい一日になるのはすでにわかっていた。