「そうなんだね」
単なる相槌になってしまったけれど、快は突っ込んで聞かれなかったことに、むしろほっとしたようだった。
「まぁバスケは好きだからさ。綾織さんは部活、何曜日にあるの?」
そのまま話題は美久のことに移っていった。美久はそれに答えて、快がまた聞いてくれて、そして……と話は続いていく。
話しながら、美久はもうひとつのことに気付いた。
合同体育のときのことだ。
快は最初、コートに入って華麗なプレイを見せていた。
けれどすぐにチェンジしてしまったのだ。あれだけのプレイだったのに。
それも事情が絡んでいることは、どうやら間違いなさそうであった。
でもそれならバスケができないとか、できなくなったとか、そういうわけではないだろうに。
謎は深まってしまった。
やはり今、聞くことではなかったけれど。
あちこち見て回って、美久は初めて見つけた作家の本を借りることに決めた。国語の授業で一本だけ短編を読む機会があって、それがおもしろかったので一冊読んでみることにしたのだ。
快は先程の三巻を手にしていたので、カウンターでお互い手続きをして借りた。
そろそろ帰ろうかと思う。だいぶ長々過ごしてしまった。下校時間も近付きそうだ。
今日は楽しかった、と美久は思う。
新しい本を見つけられたのも、快に会えたのも。
一番は、髪型を変えたのを褒めてもらえたこと、だけど。
すごく嬉しかった。
男の子に容姿を褒められたことなど、美久は初めてだったのだ。
「そろそろ帰る?」
快に言われたときはちょっと惜しくなってしまうくらいだった。
「そうだね、下校時間になりそうだし帰ろうかな」
でもまた会えるのだろう。図書室に来たときいつも会えるわけでないのは残念だけど……。
美久の思考を読んだように、快がちょっと唐突なことを言った。
「もし良ければ、図書室でまた会わないか?」
「……え?」
美久はきょとんとしてしまう。
また会わないか、とは。
待ち合わせ、とか?
思ってどきりとした美久であったけれど、それはまだ早かった。
「もし良ければ、だけどさ。週に一回とか……」
快はどこか決まりの悪そうな顔をしていた。その表情の理由が美久にはよくわからない。意外過ぎてぽかんとするばかりだった。
単なる相槌になってしまったけれど、快は突っ込んで聞かれなかったことに、むしろほっとしたようだった。
「まぁバスケは好きだからさ。綾織さんは部活、何曜日にあるの?」
そのまま話題は美久のことに移っていった。美久はそれに答えて、快がまた聞いてくれて、そして……と話は続いていく。
話しながら、美久はもうひとつのことに気付いた。
合同体育のときのことだ。
快は最初、コートに入って華麗なプレイを見せていた。
けれどすぐにチェンジしてしまったのだ。あれだけのプレイだったのに。
それも事情が絡んでいることは、どうやら間違いなさそうであった。
でもそれならバスケができないとか、できなくなったとか、そういうわけではないだろうに。
謎は深まってしまった。
やはり今、聞くことではなかったけれど。
あちこち見て回って、美久は初めて見つけた作家の本を借りることに決めた。国語の授業で一本だけ短編を読む機会があって、それがおもしろかったので一冊読んでみることにしたのだ。
快は先程の三巻を手にしていたので、カウンターでお互い手続きをして借りた。
そろそろ帰ろうかと思う。だいぶ長々過ごしてしまった。下校時間も近付きそうだ。
今日は楽しかった、と美久は思う。
新しい本を見つけられたのも、快に会えたのも。
一番は、髪型を変えたのを褒めてもらえたこと、だけど。
すごく嬉しかった。
男の子に容姿を褒められたことなど、美久は初めてだったのだ。
「そろそろ帰る?」
快に言われたときはちょっと惜しくなってしまうくらいだった。
「そうだね、下校時間になりそうだし帰ろうかな」
でもまた会えるのだろう。図書室に来たときいつも会えるわけでないのは残念だけど……。
美久の思考を読んだように、快がちょっと唐突なことを言った。
「もし良ければ、図書室でまた会わないか?」
「……え?」
美久はきょとんとしてしまう。
また会わないか、とは。
待ち合わせ、とか?
思ってどきりとした美久であったけれど、それはまだ早かった。
「もし良ければ、だけどさ。週に一回とか……」
快はどこか決まりの悪そうな顔をしていた。その表情の理由が美久にはよくわからない。意外過ぎてぽかんとするばかりだった。