ひと駅、電車に乗った。隣の駅で降りたところの繫華街にある本屋さんはかなり大きい。
 繁華街はいろんなお店があって楽しいけれど、美久はあまり積極的に入るお店はなかった。
 お洋服のお店やメイク用品のお店だと店員さんがすぐに寄ってくるので、おどおどとしてしまうのだ。自由に見たいのに、と思ってしまう。
 だからいつも店員さんが寄ってこないような量販店に行って、適当にサッと買ってしまうようになっていた。必然的に私服もあまりオシャレとはいいがたかったかもしれない。今日は制服だからあまり関係はないけれど。
 ほかにもカフェとか食べ歩きができるテイクアウトのお店とか、あるいは露店に近いようなものとか……たくさんお店があってごちゃごちゃしている。
 楽しいのと、ひとが多くて怖いのと、両方の気持ちが混ざってしまう美久は、早く着いてしまおうと本屋さんへ向かったのだけど、通りかかったあるお店の前でちょっとだけ足が止まってしまった。
 そこは雑貨屋さんだった。かわいいぬいぐるみや文具、ちょっとしたバッグやポーチ……そんなものを並べている。入り口から大きく開いているので奥まで良く見えた。
 目を留めてしまったのは、もうすぐ留依の誕生日であることを思い出したからだ。確か留依は十二月生まれ。あと一ヵ月と少し。
 なにかプレゼントをあげたいな、と思ったのだ。
 女子高生同士の誕生日プレゼントなのだ、こういう雑貨はうってつけかもしれない。よって目が止まってしまった。
 ちょっとだけ見ようかな。
 思って、美久は入り口の近くだけであるけれど、ちょっとだけ見ることにした。
 ポップでカラフルな小物がところせましと並んでいる。
 かわいいけれど。
 美久はすぐに困ったことに気が付いた。
 留依はオシャレだ。
 そりゃあもう、再会したとき一目見て「かわいい」と思ってしまったくらいオシャレだ。
 そんな留依にプレゼントを。
 随分ハードルが高いではないか。留依が持っていて、あるいは身に着けていてふさわしいものを選べるだろうか。
 美久は既に悩んでしまった。別に今決めるわけではないけれど。
 やっぱりこういうものは自分には合わないのかもしれない。
 無難に文房具とかにしたほうがいいのかなぁ。
 でもせっかく再会して初めての誕生日。ちょっとはかわいいものを贈りたい。
 自信のなさと、友達への思いで揺れていて、美久はちょっとぼうっとしていたのかもしれなかった。
「ねぇ、きみ」
 隣から声がかかって、びくっとした。男のひとの声だ。