バレンタインは平日だった。そのために学校では朝からそわそわした空気が漂いっぱなしだった。
それは放課後にピークを迎える。
教室で堂々と行われるのは、女子同士の友チョコ交換だ。
「トリュフ作ったんだよ!」
「私はチョコクッキー!」
かわいいラッピングをしたチョコが飛び交う。
美久もそれに参加した。作ってきていたキューブチョコを配る。
自分でもたっぷりもらった。
クラスのほとんどの女子からもらってしまったくらいだ。
美久の周りのひとたちも随分変わった。
変わった、というか、増えた。
今まで仲の良かった子たち以外のひとたちとも、前より話すようになっていた。
それは美久の見た目や、それ以上に心が変わったからだろう。周りの子たちもそれに好感を持ってくれたようだ。きっと良いこと、なのだろう。
どきどきしつつ、あかりの元にも行った。
あかりは勿論、快と美久が付き合うことになったのはとっくに知っているはずだった。快から話していないわけはないし。
なので美久とも仲良くしてくれるはずがなかった。クラスの係など、することはしてくれるけれど、やっぱりツンツンした様子で最低限しか口をきいてくれない。
でも美久はそれでじゅうぶんだった。無理に仲良くしなくてもいいし、それに自分があかりの立場だったら、本当は意地悪のひとつでもしたい気持ちになってしまうだろうから。それをしないのは、あかりの心の深い部分がきっと優しいからなのだ。
「桐生さん、良かったらもらってくれないかな」
まだ内心はびくびくしていたけれど、それでも袋を差し出した。あかりはそれを見て、ちょっと眉を寄せる。
「なんで私に」
口調もつっけんどんだった。けれど美久は手を引かない。
「みんなにあげてるから、桐生さんにももらってほしいなって」
それは放課後にピークを迎える。
教室で堂々と行われるのは、女子同士の友チョコ交換だ。
「トリュフ作ったんだよ!」
「私はチョコクッキー!」
かわいいラッピングをしたチョコが飛び交う。
美久もそれに参加した。作ってきていたキューブチョコを配る。
自分でもたっぷりもらった。
クラスのほとんどの女子からもらってしまったくらいだ。
美久の周りのひとたちも随分変わった。
変わった、というか、増えた。
今まで仲の良かった子たち以外のひとたちとも、前より話すようになっていた。
それは美久の見た目や、それ以上に心が変わったからだろう。周りの子たちもそれに好感を持ってくれたようだ。きっと良いこと、なのだろう。
どきどきしつつ、あかりの元にも行った。
あかりは勿論、快と美久が付き合うことになったのはとっくに知っているはずだった。快から話していないわけはないし。
なので美久とも仲良くしてくれるはずがなかった。クラスの係など、することはしてくれるけれど、やっぱりツンツンした様子で最低限しか口をきいてくれない。
でも美久はそれでじゅうぶんだった。無理に仲良くしなくてもいいし、それに自分があかりの立場だったら、本当は意地悪のひとつでもしたい気持ちになってしまうだろうから。それをしないのは、あかりの心の深い部分がきっと優しいからなのだ。
「桐生さん、良かったらもらってくれないかな」
まだ内心はびくびくしていたけれど、それでも袋を差し出した。あかりはそれを見て、ちょっと眉を寄せる。
「なんで私に」
口調もつっけんどんだった。けれど美久は手を引かない。
「みんなにあげてるから、桐生さんにももらってほしいなって」