浅葱の言った言葉もあのときと同じだった。
 でも、四月からもそれが叶えられると知ってもっと気持ちは強くなった。
 浅葱は手を動かして自分からも壱樹先輩の手に触れる。きゅっと握った。
「壱樹先輩の手が生み出す世界。私にも一番近くで見せてください」
 それは約束。
 これからもっとたくさんの絵を描きたい、と思う。
 部活で、プライベートで、それからビケンで。
 もっともっと先のことを言うなら、二年後に同じ大学で。
 ずっと隣で見ていたい、と思う。

『美しいものを一緒にこれからも見たい』

 告白のときに壱樹先輩が言ってくれたこと。
 その美しいもの、はたくさんあるだろう。
 一緒に見たイルミネーションもそのひとつ。実際にあれから二人で綺麗なものをたくさん見た。

 でもその中でも、きっと一番美しいもの。
 それはこの手が生み出す絵。生み出す世界。
 なにより美しいそれを、ずっとお互いに見ていよう。
 近づいてくる春は、もう悲しいものでも寂しいものでもなかった。

 一緒に進める。
 一緒に目指せる。

 美しくて、見るひとの心を惹きつけて、そしてなにより『自分らしい世界』。
 壱樹先輩の傍にいたならば、もっともっと素敵な世界を生み出すことができるだろう。

 (完)