「本っ当にっ!申し訳ございません!!必ず 間に合うように致しますのでっ! 恐れ入りますっ!!」
式場の女性スタッフさんが 頬を赤らめて謝罪をする姿を、シオンは ジトッとした眼差しで 眺めている。これは、あれですよ。祭女子達とおんなじ 顔ですよ と、
シオンは、顎に指を当てて 観察しているところだ。そして、この声。この女性スタッフが 司会をするんだろうとも 推測してみる。
そんな女性スタッフに レンは
「大丈夫ですよ。家族葬で、弔問も あまり無いはずですから。この雪ですし、慌てませんよ。」
と、綺麗にスマイルしている。
シオンは、窓の外の国道を見つめた。雪はますます降ってきている。
なんでも、葬儀が多くなった上、この雪で 花の配達が遅れているらしい。
国道沿いの 家族葬専門の式場は、1日1件だけ対応できる アットホームタイプだった。
レンに乗せてもらって 車が着いた建物は、中に入ると 葬儀場というより 広めのマンションリビングという雰囲気。全体的にお洒落で、シオンが覗いてみると、奥の控え室も、今風の和室で、シャワールームもあった。
最近の葬儀の傾向ってやつだ。
本当に 誰かの家に来て、葬儀をするみたいだと シオンは リビングのダイニングチェアに座わる。
祭壇のあるリビングの後ろには、大きいインテリアダイニングテーブルといくつも椅子が 備えられている。
レンが 脱いだトレンチコートを 片手に シオンの隣の椅子に座った。
「ちょっ、喪服じゃないの?!トレーナーじゃないのそれ?!」
シオンはレンのトレンチコート下の服装をみて 慌てた。てっきり喪服スーツだと思ってたのが、ブラックデニムに 白のタートル姿なのだから。
「先にシオンを迎えに行ってから 着替えるつもりだったからね。大丈夫、充分時間はあるよ。」
レンは雪で湿った前髪をかき揚げる。シオンはわざと目が細めた。
「てか、式場の人が迎えにくるって思ってた!。そもそも喪主は 忙しいのに 駅まで迎えにくるなんて おかしいでしょ!!。ほら、コートかして!ハンガーに掛けないとダメ!!」
そう 思わずわめいて シオンは 椅子の背もたれに掛けられた トレンチコートを さっさとコート掛けに 持っていく。
そこに 先ほどの女性スタッフが、二人分のおしぼりと、お茶をテーブルに運び、レンにおしぼりを どうぞと 渡すのが見えた。
それに、ありがとうと 応えて レンは、
「シオンが ここに電話かけてきたのを 教えてもらったから 迎えに行ったんだよ? 喪主っていっても、全部おまかせで お願いしたから、やることないしね。
シオンは、相変わらず いろいろ気が利くね。」
やっぱり 口元を綻ばせながら、シオンにも 礼を言う。
女性スタッフは、シオンにも おしぼりを手渡してくれた。どうぞは?まあ、いいけどねと、シオンは 頂いたお茶に口をつけて、ついっと目をやった。
祭壇になる場所。
そこには、叔母の写真が壁に掛かって、下には 白雪姫が眠ってそうなの棺が 佇む。その蓋は閉じられている。
シオンは、眠る叔母に 挨拶をしてもいいかと レンを見た。が、
「何か、違う気がするなあ。寂しくない?」
レンは ダイニングチェアから 祭壇方向を眺めて おもむろに 口にした。
「さっき 言ってたでしょ。花が遅れるって。葬儀の祭壇なんて、花がないと こんなもんよ。これ 本当に間に合わなかったら悲惨よ。」
シオンも祭壇側を見ながら 言葉を続ける。
こんな寒い日は、葬儀が重なるとかシオンも聞いたことがある。ましてや 記録的な大雪だ。車も止まれば、花が着かないこともあるのでは…。
「ねぇ、あたしは いいとして、さすがに ご近所さんとか 他の弔問客の手前、花が無いと 困るよ?。ね?。」
レンは 出されたお茶を飲みながら何も言わずに落ちついてる。これは、シオンの話を聞いていないのではない。 切れ長の目は ちゃんとシオンを捉えている。
「あと、ムダにイケメンなんだから、至るところで、愛想ふりまいてると 彼女なり 嫁なりに嫌がられるでしょ?!」
さらに、シオンは言葉を続けた。レンの瞳が ちょっと動いた。でも口元はコップで隠れているから、笑っているのかは わからない。
「あー、ルイは?あたし、ルイに迎えに来てもらえば 良かったんじゃないの?!」
今、レンの目が 大きくなった?シオンは レンの動きを拾うしかない。
そう、レンは 『目でモノ言う』タイプ。
口数が少ない男の子だった。ただ、さっきからの様子だと、成長して 随分と気障な感じはいけるみたいだが。
シオンだからか、 こうして 相対すると レン独特の空気を醸し出して 、昔みたいに目で会話する まま。のようだ。
コップを両手に挟んで、少ししてからレンが言った。
「残念ながら、彼女も嫁もいないよ。ルイは…もう十年以上 会ってない。」
シオンは 絶句した。文字通り。
叔母への挨拶の 了承を忘れたまま。
式場の女性スタッフさんが 頬を赤らめて謝罪をする姿を、シオンは ジトッとした眼差しで 眺めている。これは、あれですよ。祭女子達とおんなじ 顔ですよ と、
シオンは、顎に指を当てて 観察しているところだ。そして、この声。この女性スタッフが 司会をするんだろうとも 推測してみる。
そんな女性スタッフに レンは
「大丈夫ですよ。家族葬で、弔問も あまり無いはずですから。この雪ですし、慌てませんよ。」
と、綺麗にスマイルしている。
シオンは、窓の外の国道を見つめた。雪はますます降ってきている。
なんでも、葬儀が多くなった上、この雪で 花の配達が遅れているらしい。
国道沿いの 家族葬専門の式場は、1日1件だけ対応できる アットホームタイプだった。
レンに乗せてもらって 車が着いた建物は、中に入ると 葬儀場というより 広めのマンションリビングという雰囲気。全体的にお洒落で、シオンが覗いてみると、奥の控え室も、今風の和室で、シャワールームもあった。
最近の葬儀の傾向ってやつだ。
本当に 誰かの家に来て、葬儀をするみたいだと シオンは リビングのダイニングチェアに座わる。
祭壇のあるリビングの後ろには、大きいインテリアダイニングテーブルといくつも椅子が 備えられている。
レンが 脱いだトレンチコートを 片手に シオンの隣の椅子に座った。
「ちょっ、喪服じゃないの?!トレーナーじゃないのそれ?!」
シオンはレンのトレンチコート下の服装をみて 慌てた。てっきり喪服スーツだと思ってたのが、ブラックデニムに 白のタートル姿なのだから。
「先にシオンを迎えに行ってから 着替えるつもりだったからね。大丈夫、充分時間はあるよ。」
レンは雪で湿った前髪をかき揚げる。シオンはわざと目が細めた。
「てか、式場の人が迎えにくるって思ってた!。そもそも喪主は 忙しいのに 駅まで迎えにくるなんて おかしいでしょ!!。ほら、コートかして!ハンガーに掛けないとダメ!!」
そう 思わずわめいて シオンは 椅子の背もたれに掛けられた トレンチコートを さっさとコート掛けに 持っていく。
そこに 先ほどの女性スタッフが、二人分のおしぼりと、お茶をテーブルに運び、レンにおしぼりを どうぞと 渡すのが見えた。
それに、ありがとうと 応えて レンは、
「シオンが ここに電話かけてきたのを 教えてもらったから 迎えに行ったんだよ? 喪主っていっても、全部おまかせで お願いしたから、やることないしね。
シオンは、相変わらず いろいろ気が利くね。」
やっぱり 口元を綻ばせながら、シオンにも 礼を言う。
女性スタッフは、シオンにも おしぼりを手渡してくれた。どうぞは?まあ、いいけどねと、シオンは 頂いたお茶に口をつけて、ついっと目をやった。
祭壇になる場所。
そこには、叔母の写真が壁に掛かって、下には 白雪姫が眠ってそうなの棺が 佇む。その蓋は閉じられている。
シオンは、眠る叔母に 挨拶をしてもいいかと レンを見た。が、
「何か、違う気がするなあ。寂しくない?」
レンは ダイニングチェアから 祭壇方向を眺めて おもむろに 口にした。
「さっき 言ってたでしょ。花が遅れるって。葬儀の祭壇なんて、花がないと こんなもんよ。これ 本当に間に合わなかったら悲惨よ。」
シオンも祭壇側を見ながら 言葉を続ける。
こんな寒い日は、葬儀が重なるとかシオンも聞いたことがある。ましてや 記録的な大雪だ。車も止まれば、花が着かないこともあるのでは…。
「ねぇ、あたしは いいとして、さすがに ご近所さんとか 他の弔問客の手前、花が無いと 困るよ?。ね?。」
レンは 出されたお茶を飲みながら何も言わずに落ちついてる。これは、シオンの話を聞いていないのではない。 切れ長の目は ちゃんとシオンを捉えている。
「あと、ムダにイケメンなんだから、至るところで、愛想ふりまいてると 彼女なり 嫁なりに嫌がられるでしょ?!」
さらに、シオンは言葉を続けた。レンの瞳が ちょっと動いた。でも口元はコップで隠れているから、笑っているのかは わからない。
「あー、ルイは?あたし、ルイに迎えに来てもらえば 良かったんじゃないの?!」
今、レンの目が 大きくなった?シオンは レンの動きを拾うしかない。
そう、レンは 『目でモノ言う』タイプ。
口数が少ない男の子だった。ただ、さっきからの様子だと、成長して 随分と気障な感じはいけるみたいだが。
シオンだからか、 こうして 相対すると レン独特の空気を醸し出して 、昔みたいに目で会話する まま。のようだ。
コップを両手に挟んで、少ししてからレンが言った。
「残念ながら、彼女も嫁もいないよ。ルイは…もう十年以上 会ってない。」
シオンは 絶句した。文字通り。
叔母への挨拶の 了承を忘れたまま。