ルイが運転席で、片眉を上げたのが、見えた。
「はは、! おまっ、『ミシガン』でも乗んのか?!」
そんな風に 笑う ルイに、どや顔をして、シオンは 言い放つ。
「違うよー。京都に、お墓参りして、今回の旅は 終わりなのっ」
「…、疎水か。」
ルイが フロントガラスの遠くを見るように、言った。
「さすが、ルイ。よく知ってる!」
そんなシオンと、ルイのやり取りを レンは後部座席から、顔を出して、不思議そうにしている。
「疎水って? 俺、知らないけど。」
そんなレンに、ルイが
「そりゃ、レンは 知らないよなぁ。最近、大津から また京都に、疎水使って、船便が出てんだよ。」
と、ちょっと レンを見舞って、教えてやる。
明治時代に、疎水が物流で使われるようになったが、その期間は 長くなく、同じ明治のうちに、使用が終わる。
その 疎水舟が、最近 観光として復活しているのだ。但し、期間は 限定されている。
「春と秋だけ、なんだけどねー。ほら、大津から 京都まで電車で、すぐだけどさ、向こう着いてから、けっこう あるでしょ?」
シオンも、後部座席から顔を出している、レンを見て 説明を続けた。
「うん。お墓って、東山だろ? 京都駅から、タクシーでも、いいんじゃないのか?」
レンが、シオンを見る。
「レン、京都駅から、タクシーで、東山は、この季節、鬼だよ。」
レンの頭を シオンは ヨシヨシと 撫でた。
そのシオンの 仕草を、忌々しそうにしているルイ。
「レンよぉ、そーゆーフリ、小聡明いよなあ。なぁ、大津から、蹴上に出るんだよなあ、疎水舟。舟いいな!、オレも行くか!」
言いながら、早速 ルイが 車の案内を開いている。
「あのね、完全予約制だから、急には 乗れないのー。残念だねー。だから、近くで、下ろしてくれる?舟の時間 ギリかもー。」
シオンは、ルイが 開いた案内の地図を、 拡大して 指でカーソルを 滑らさせた。
湖畔の風景が、街並みに入っていく。空が、変わる。
「だあっぁ!なんだよ。くそっ。予約かよっ。じゃあ、大津の 乗り場まで乗せてくぞ。 お!レンは 飯は?どっかで食うか?」
あははーっと、笑ってシオンも、
「レンは、東京、戻るの、明日?今日?。四十九日とか、どーするの?」
と 振り返り 、レンに投げ掛ける。と そこに、ルイが しゃべり 被せてくる。
「あ、レン、初七日どーすんだ?」
矢継ぎ早に、話を振られたレンは、それを 穏やかに 往なす様に、
「帰り、どうしようかな?仕事は、明後日まで休み、出してる。
なかなか、後の世話もできないし、お袋は、永代供養で、親父方の菩提寺に お願いするよ。」
そう言って 隣に置いている、骨壷を 見る。
「そっかー。なら、京都のお墓に、叔母さんの事、ちゃんと 報告、あたしが するね。」
シオンも 心寂しい気になって、レンの隣の骨壷を見ながら、
「あと ルイやっぱり 、どっかの コインランドリーで、下ろしてくれない?この叔母さんの喪服、いい加減、脱いで返さなきゃ。」
そうなのだ、シオンは まだ『叔母の喪服』を着ている。
それに、すぐレンが 答え、
「シオン、その喪服、持っていて。きっと、お袋、シオンに渡すと思う。」
シオンが着る、喪服の肩を フワッと 撫でた。
「そうだぞ、おまえ、オカンのお気に入りだかんな。」
「うーん。そうなのかな。うん。なら、このまま、着て舟に乗るかな。」
そりゃ、いい。なんかの、撮影だなとか、笑う、ルイ。
「で、この叔母さんの喪服を、あたしのエンディングドレスにするよ。」
シオンは、静かに ハッキリと、口にする。レンとルイが、止まる。
「それ、」
レンの 語りかけに、シオンは 後部座席を見て、
「いいでしょ?故人の喪服で、参列した、あたしが、自分が逝く時に、叔母さんの、喪服 着ているの。」
「、、うん、シュールだね」
レンの
表情を、読めないまま、シオンは 二人に 乞う。
「ね、いつか、レンとルイで、叔母さんの事、あの神社に、報告してくれる?」
隣で 運転する、ルイにも シオンは、視線を投げた。
「うん。」
レンが、短く、答えた。その直ぐだった。
「おい!レンいくぞ!」
「今日、行くぞ!帰んの、明日でもいいんだろ?行こうぜ。おう、昔みてーに、チャリンコだ。」
ルイが 勢いよく、レンに言い放った。レンが 後部座席で 後退る。
「マジなのか?」
白い視線を、ルイに打ち返した。
「マジ、マジ。行こうぜ、琵琶湖なあ、サイクリングロード けっこうあっからな。よし、ラーメン喰って、行くぞっ 。」
なぜか、ラーメンも くっついてきたと、シオンも 目を細くする。
なんのノリだ。
「やだ。自転車。」
レンも、子どもの様に、反抗する。
「んなこと、言うなって。ぜってー良いって。滋賀はなぁ、ラーメン、トッピングも、激熱だ。」
「ラーメン・・・」
シオンは、このレンの反応が、わかる。ルイもだろう。
「レンが好きな、あれも入れ れっぞ。ラーメン喰って、ガキん頃みてーに、『見渡す限りの 田んぼ』をよ、激走だよなぁ。」
レンの好きなラーメンね、シオンは 夏を思い出して、笑う。
そして、
だいぶん、街に入ってきたけど、と思いつつ、シオンは 二人のやり取りを、楽しむ。
まだ、二人は、やりあっている。
「ーーー体力ない。」
「舐めてんのか?昨日見たぞ、鍛えてるんだろぉ?細マッチさんよぉ」
「チッ」
初めて、レンの舌打ちが、、。
「決まりだなあ!」
完全に、女子シオンは、置いてきぼりだと、思った。
「じゃあ、大津まで 送りはいいよ。草津で下ろして。今からじゃ、帰り困るでしょ?」
そう 弱冠、拗ね気味に、シオンが ルイに 突っかかる。
「いーよ。どーせなら、シオン泊まった、茅葺き宿行くのもオツだろ?」
さらに、驚きワードを ルイは言ってきた。
レンは、シオンの座席に、頭をくっ付けて、諦めのポーズだ。
「なっ、!よっぽど、お漬け物、気に入ったんだー?!」
シオンも、呆れる。
「日野菜の桜漬けサイコー!!」
額に手を当てる シオンと、レンに お構い無しで、ルイは 嬉しそうに、片手を握り上げた。
そろそろ、草津の駅だろうか?
そう、思ったのは ルイが、
「今度、会うのは。」
と シオンに聞いたからだ。
少し考えて、うん。
「きっと、来世だね。」
シオンは、答えた。
後部座席から、
「ん? 誰かのお葬式だよ、きっと。」
レンが言った。
「そうかも、じゃあ、三人で会うのは 最後かも?」
今度は、振り返り、シオンは言葉にしてみる。
そんな、シオンの言葉に、ルイが、
「なら、レン、先に逝くよな?そん時は、遠慮なくシオン、迎え行にいってやる。」
真っ直ぐ、言いきる。
「ルイ、逝け。」
お、魔王降臨、とルイの呟き。
「そんな事 、言って、わかんないよ、あたしが、それこそ、明日かもよー。」
シオンは、二人に向けて 口にする。
そう、最後に残る 『未来が分からない厄災』は、明日 箱から、出るかもしれない。
シオン達には、『再会の希望』。
そして、きっと 誰か 欠ければ、必ずわかる。そんな気がする。
だって、繋がってる。んでしょ?
「そん時はぁ、・・オレが おまえを、焼いてやる。明日なら、アイツんとこなら 頼めるだろ?」
わざと明るく ルイは シオンに応えた。
「明日とか、冗談やめろ。例え、そうなるなら、俺が する。アイツも 新しい釜も買収して、シオンを逝かせる。」
あちゃー、
レンは、壊れたままだったかー、と シオンは思ってしまった。
「こえー。マジ、窯元だな?」
ルイが 苦笑いをしている。
「面白くないよ。」
まじめかっ!!とルイは
レンに 突っ込んだ。
シオンも、うん。突っ込む。
「釜じゃないよ、炉だって。」
ルイの車が、駅前につく。
「ここでいーのか?」
ルイが、シオンに、確認してくる。
「ありがとう」
シオンは、ルイの頭を 撫でた。
それにルイが
「じゃ、次、会う 葬式まで。」
と、泣きそうな 顔で答えた。
「そこは、来世でって言うところだろ。」
そう、言い放って、後部座席のドアを、レンが 勢いよく 開けた。
そして、シオンのドアを開ける。
シオンの手を取ってくれる。
シオンは その手てで、
車を出る。
そして、レンの頭も、撫でた。
「じゃあ、、、、来世で、」
レンは、猫のように、
シオンの撫でる手に、
名残惜しそうに、
すり寄って、離れた。
「はは、! おまっ、『ミシガン』でも乗んのか?!」
そんな風に 笑う ルイに、どや顔をして、シオンは 言い放つ。
「違うよー。京都に、お墓参りして、今回の旅は 終わりなのっ」
「…、疎水か。」
ルイが フロントガラスの遠くを見るように、言った。
「さすが、ルイ。よく知ってる!」
そんなシオンと、ルイのやり取りを レンは後部座席から、顔を出して、不思議そうにしている。
「疎水って? 俺、知らないけど。」
そんなレンに、ルイが
「そりゃ、レンは 知らないよなぁ。最近、大津から また京都に、疎水使って、船便が出てんだよ。」
と、ちょっと レンを見舞って、教えてやる。
明治時代に、疎水が物流で使われるようになったが、その期間は 長くなく、同じ明治のうちに、使用が終わる。
その 疎水舟が、最近 観光として復活しているのだ。但し、期間は 限定されている。
「春と秋だけ、なんだけどねー。ほら、大津から 京都まで電車で、すぐだけどさ、向こう着いてから、けっこう あるでしょ?」
シオンも、後部座席から顔を出している、レンを見て 説明を続けた。
「うん。お墓って、東山だろ? 京都駅から、タクシーでも、いいんじゃないのか?」
レンが、シオンを見る。
「レン、京都駅から、タクシーで、東山は、この季節、鬼だよ。」
レンの頭を シオンは ヨシヨシと 撫でた。
そのシオンの 仕草を、忌々しそうにしているルイ。
「レンよぉ、そーゆーフリ、小聡明いよなあ。なぁ、大津から、蹴上に出るんだよなあ、疎水舟。舟いいな!、オレも行くか!」
言いながら、早速 ルイが 車の案内を開いている。
「あのね、完全予約制だから、急には 乗れないのー。残念だねー。だから、近くで、下ろしてくれる?舟の時間 ギリかもー。」
シオンは、ルイが 開いた案内の地図を、 拡大して 指でカーソルを 滑らさせた。
湖畔の風景が、街並みに入っていく。空が、変わる。
「だあっぁ!なんだよ。くそっ。予約かよっ。じゃあ、大津の 乗り場まで乗せてくぞ。 お!レンは 飯は?どっかで食うか?」
あははーっと、笑ってシオンも、
「レンは、東京、戻るの、明日?今日?。四十九日とか、どーするの?」
と 振り返り 、レンに投げ掛ける。と そこに、ルイが しゃべり 被せてくる。
「あ、レン、初七日どーすんだ?」
矢継ぎ早に、話を振られたレンは、それを 穏やかに 往なす様に、
「帰り、どうしようかな?仕事は、明後日まで休み、出してる。
なかなか、後の世話もできないし、お袋は、永代供養で、親父方の菩提寺に お願いするよ。」
そう言って 隣に置いている、骨壷を 見る。
「そっかー。なら、京都のお墓に、叔母さんの事、ちゃんと 報告、あたしが するね。」
シオンも 心寂しい気になって、レンの隣の骨壷を見ながら、
「あと ルイやっぱり 、どっかの コインランドリーで、下ろしてくれない?この叔母さんの喪服、いい加減、脱いで返さなきゃ。」
そうなのだ、シオンは まだ『叔母の喪服』を着ている。
それに、すぐレンが 答え、
「シオン、その喪服、持っていて。きっと、お袋、シオンに渡すと思う。」
シオンが着る、喪服の肩を フワッと 撫でた。
「そうだぞ、おまえ、オカンのお気に入りだかんな。」
「うーん。そうなのかな。うん。なら、このまま、着て舟に乗るかな。」
そりゃ、いい。なんかの、撮影だなとか、笑う、ルイ。
「で、この叔母さんの喪服を、あたしのエンディングドレスにするよ。」
シオンは、静かに ハッキリと、口にする。レンとルイが、止まる。
「それ、」
レンの 語りかけに、シオンは 後部座席を見て、
「いいでしょ?故人の喪服で、参列した、あたしが、自分が逝く時に、叔母さんの、喪服 着ているの。」
「、、うん、シュールだね」
レンの
表情を、読めないまま、シオンは 二人に 乞う。
「ね、いつか、レンとルイで、叔母さんの事、あの神社に、報告してくれる?」
隣で 運転する、ルイにも シオンは、視線を投げた。
「うん。」
レンが、短く、答えた。その直ぐだった。
「おい!レンいくぞ!」
「今日、行くぞ!帰んの、明日でもいいんだろ?行こうぜ。おう、昔みてーに、チャリンコだ。」
ルイが 勢いよく、レンに言い放った。レンが 後部座席で 後退る。
「マジなのか?」
白い視線を、ルイに打ち返した。
「マジ、マジ。行こうぜ、琵琶湖なあ、サイクリングロード けっこうあっからな。よし、ラーメン喰って、行くぞっ 。」
なぜか、ラーメンも くっついてきたと、シオンも 目を細くする。
なんのノリだ。
「やだ。自転車。」
レンも、子どもの様に、反抗する。
「んなこと、言うなって。ぜってー良いって。滋賀はなぁ、ラーメン、トッピングも、激熱だ。」
「ラーメン・・・」
シオンは、このレンの反応が、わかる。ルイもだろう。
「レンが好きな、あれも入れ れっぞ。ラーメン喰って、ガキん頃みてーに、『見渡す限りの 田んぼ』をよ、激走だよなぁ。」
レンの好きなラーメンね、シオンは 夏を思い出して、笑う。
そして、
だいぶん、街に入ってきたけど、と思いつつ、シオンは 二人のやり取りを、楽しむ。
まだ、二人は、やりあっている。
「ーーー体力ない。」
「舐めてんのか?昨日見たぞ、鍛えてるんだろぉ?細マッチさんよぉ」
「チッ」
初めて、レンの舌打ちが、、。
「決まりだなあ!」
完全に、女子シオンは、置いてきぼりだと、思った。
「じゃあ、大津まで 送りはいいよ。草津で下ろして。今からじゃ、帰り困るでしょ?」
そう 弱冠、拗ね気味に、シオンが ルイに 突っかかる。
「いーよ。どーせなら、シオン泊まった、茅葺き宿行くのもオツだろ?」
さらに、驚きワードを ルイは言ってきた。
レンは、シオンの座席に、頭をくっ付けて、諦めのポーズだ。
「なっ、!よっぽど、お漬け物、気に入ったんだー?!」
シオンも、呆れる。
「日野菜の桜漬けサイコー!!」
額に手を当てる シオンと、レンに お構い無しで、ルイは 嬉しそうに、片手を握り上げた。
そろそろ、草津の駅だろうか?
そう、思ったのは ルイが、
「今度、会うのは。」
と シオンに聞いたからだ。
少し考えて、うん。
「きっと、来世だね。」
シオンは、答えた。
後部座席から、
「ん? 誰かのお葬式だよ、きっと。」
レンが言った。
「そうかも、じゃあ、三人で会うのは 最後かも?」
今度は、振り返り、シオンは言葉にしてみる。
そんな、シオンの言葉に、ルイが、
「なら、レン、先に逝くよな?そん時は、遠慮なくシオン、迎え行にいってやる。」
真っ直ぐ、言いきる。
「ルイ、逝け。」
お、魔王降臨、とルイの呟き。
「そんな事 、言って、わかんないよ、あたしが、それこそ、明日かもよー。」
シオンは、二人に向けて 口にする。
そう、最後に残る 『未来が分からない厄災』は、明日 箱から、出るかもしれない。
シオン達には、『再会の希望』。
そして、きっと 誰か 欠ければ、必ずわかる。そんな気がする。
だって、繋がってる。んでしょ?
「そん時はぁ、・・オレが おまえを、焼いてやる。明日なら、アイツんとこなら 頼めるだろ?」
わざと明るく ルイは シオンに応えた。
「明日とか、冗談やめろ。例え、そうなるなら、俺が する。アイツも 新しい釜も買収して、シオンを逝かせる。」
あちゃー、
レンは、壊れたままだったかー、と シオンは思ってしまった。
「こえー。マジ、窯元だな?」
ルイが 苦笑いをしている。
「面白くないよ。」
まじめかっ!!とルイは
レンに 突っ込んだ。
シオンも、うん。突っ込む。
「釜じゃないよ、炉だって。」
ルイの車が、駅前につく。
「ここでいーのか?」
ルイが、シオンに、確認してくる。
「ありがとう」
シオンは、ルイの頭を 撫でた。
それにルイが
「じゃ、次、会う 葬式まで。」
と、泣きそうな 顔で答えた。
「そこは、来世でって言うところだろ。」
そう、言い放って、後部座席のドアを、レンが 勢いよく 開けた。
そして、シオンのドアを開ける。
シオンの手を取ってくれる。
シオンは その手てで、
車を出る。
そして、レンの頭も、撫でた。
「じゃあ、、、、来世で、」
レンは、猫のように、
シオンの撫でる手に、
名残惜しそうに、
すり寄って、離れた。