もう、歯の付け根が ガチガチいって合わない!
アイボリーのスプリングコートなんて、全く役に立たない寒さの 草津駅で、シオンは 式場に電話をする。
「あ、すいません。今日、そちらで通夜式があると思うんですが、時間を教え頂けますか?」
まずは、通夜式の時間を聞いて、もう会場入りが出来るか確認。
それから 供養花のお願いをして、
「今、草津駅なんですが 最寄り駅に着く頃に 配車とかお願いできますでしょうか?」
現状シオンにとって、これが一番大事。
大雪の中、こんな見知らぬ土地。タクシーが来るか わからないのだから、式場バスか、車を回すかをお願いしないと きっと道中で 遭難してしまう。
幸いにも 電話の向こうからは、
「お待ちください、あ、大丈夫だそうです。今、草津駅ですね。ロータリーにお車 参りますとのことです。お気をつけ ご来館くださいませ。」
と、受付か 事務の女性が受けてくれ、シオンは ほっと安心した。
ここから、いくつか各停電車を乗った先が 葬儀会場の駅であり、叔母の家がある駅でもある。
まだ会場を作っている最中みたいだが、遠い親戚が控える部屋ぐらいあるのだろう。シオンは迷うことなく早めの会場入りを決めた。
ふと 電車の雪景色を見て 思うに、シオンはこの季節の滋賀には 初めて来たことに気がついた。
今でこそ 往信不通の親戚だが、子ども時代、夏休み中は 必ずといっていいほど遊びに来ていた。
それこそ、夏の間は 滋賀の叔母の子どもになったのかというぐらいに。
シオンにとって、夏といえば海ではない。
広大な琵琶湖や、その支流へ流れる川での遊びが 夏の水辺。
海の青さよりも、ずっと淡い水色の飛沫がきらめく 水面。
それが 小学生の夏の思い出であり、日差しもやさしい 少女時代の夏の記憶だった。
「ああ、いけない!開きボタン忘れてた」
目的の駅について、ドアが空くのを待っていたら、後ろの人が さっと シオンの横にある、開ボタンを押した。
恥ずかしい気持ちを殺して、すいませんと、頭を下げて 電車を降りる。つい、都会で当たり前の、ドア開閉待ちを してしまった。
雪風の吹き込みで 車内温度が変わらないよう、乗り降りの少ない沿線は、手動ボタンでドアの開閉をする。
シオンは どうにもこれが 馴染みないため、ついドアで待ってしまうわけで。
かなり 恥ずかしい思い、でもきっと誰もそこまで 気にしないでいるだろうなと 打ち消して、改札を抜けた。
駅員以外は誰もいない。
草津よりも はるかに雪の積もりが深くなっていることに 驚きながら、
シオンは案内を確認して ロータリーを目指した。
駅を出る。そこは 真っ白な世界? いや
雪が積もる ロータリーに 車と人が見える。
きっと式場の車と 安心して近づくと、立っている人は 背の高い
いい感じ?のトレンチコートを着ている…
「雪の中に ムダにイケメン… だよね」
シオンは この一週間ですっかり慣れた 独り言を 目を瞬きさせて 漏らしたのだった。
アイボリーのスプリングコートなんて、全く役に立たない寒さの 草津駅で、シオンは 式場に電話をする。
「あ、すいません。今日、そちらで通夜式があると思うんですが、時間を教え頂けますか?」
まずは、通夜式の時間を聞いて、もう会場入りが出来るか確認。
それから 供養花のお願いをして、
「今、草津駅なんですが 最寄り駅に着く頃に 配車とかお願いできますでしょうか?」
現状シオンにとって、これが一番大事。
大雪の中、こんな見知らぬ土地。タクシーが来るか わからないのだから、式場バスか、車を回すかをお願いしないと きっと道中で 遭難してしまう。
幸いにも 電話の向こうからは、
「お待ちください、あ、大丈夫だそうです。今、草津駅ですね。ロータリーにお車 参りますとのことです。お気をつけ ご来館くださいませ。」
と、受付か 事務の女性が受けてくれ、シオンは ほっと安心した。
ここから、いくつか各停電車を乗った先が 葬儀会場の駅であり、叔母の家がある駅でもある。
まだ会場を作っている最中みたいだが、遠い親戚が控える部屋ぐらいあるのだろう。シオンは迷うことなく早めの会場入りを決めた。
ふと 電車の雪景色を見て 思うに、シオンはこの季節の滋賀には 初めて来たことに気がついた。
今でこそ 往信不通の親戚だが、子ども時代、夏休み中は 必ずといっていいほど遊びに来ていた。
それこそ、夏の間は 滋賀の叔母の子どもになったのかというぐらいに。
シオンにとって、夏といえば海ではない。
広大な琵琶湖や、その支流へ流れる川での遊びが 夏の水辺。
海の青さよりも、ずっと淡い水色の飛沫がきらめく 水面。
それが 小学生の夏の思い出であり、日差しもやさしい 少女時代の夏の記憶だった。
「ああ、いけない!開きボタン忘れてた」
目的の駅について、ドアが空くのを待っていたら、後ろの人が さっと シオンの横にある、開ボタンを押した。
恥ずかしい気持ちを殺して、すいませんと、頭を下げて 電車を降りる。つい、都会で当たり前の、ドア開閉待ちを してしまった。
雪風の吹き込みで 車内温度が変わらないよう、乗り降りの少ない沿線は、手動ボタンでドアの開閉をする。
シオンは どうにもこれが 馴染みないため、ついドアで待ってしまうわけで。
かなり 恥ずかしい思い、でもきっと誰もそこまで 気にしないでいるだろうなと 打ち消して、改札を抜けた。
駅員以外は誰もいない。
草津よりも はるかに雪の積もりが深くなっていることに 驚きながら、
シオンは案内を確認して ロータリーを目指した。
駅を出る。そこは 真っ白な世界? いや
雪が積もる ロータリーに 車と人が見える。
きっと式場の車と 安心して近づくと、立っている人は 背の高い
いい感じ?のトレンチコートを着ている…
「雪の中に ムダにイケメン… だよね」
シオンは この一週間ですっかり慣れた 独り言を 目を瞬きさせて 漏らしたのだった。