「うっまっ?! 」
リビング ダイニングの灯りが、一瞬 オレンジさを増したように シオンは感じた。
シオンが旅行荷物から出した、入れ物を開く。
そこに、爽やかな 酸っぱい薫りが生まれた。
とたん、ルイは 箸を 白い漬け物に 伸ばした。
「でしょ?旅行先のお宿で、持たせてもらったんだー。ほんと、美味しーの!!」
得意げに、シオンが 三色の漬け物を 一つ一つ、レンとルイの稲荷寿司皿へ乗せる。
半月白、緑に紫ピンク、短冊桃色の三色漬け物は 茅葺き宿でも 食べていた種類だ。
オレンジの灯りの下に
オバアちゃんに 持たされた漬け物。それは、とても優しい味をしているのだ。
すると、 緑に紫ピンクの漬け物を見た レンが
「日野菜だね。」
と、子どもみたいに笑った。
「そう、日野菜と、小蕪。で、ズイキの漬け物。珍しいでしょ?ズイキの漬け物って。日野菜は、最近 よく出るようになったけど。って、あたしらには、定番か!」
日野の郷土野菜。その 日野菜で作った漬け物は、シオンが子どもの頃は、叔母の家でしか 見たことがない代物だった。けれども 最近は 、漬け物専門店で 気軽に買える。
「ズイキ? これ すごいな、癖になっぞ!なあ、 ズイキってなんだ?」
ルイが、目を輝かせて 箸を動かす。その口元に ついた漬け葉を、シオンは指で取って食べながら、
「ほら、芋の茎だよー。ズイキって言うとピンとこないよね。そうそう、お盆野菜とかに 網目の輪切りのやつ、蓮芋あるじゃない?あれもズイキなんだよ。じゅわっとして、不思議な食感だよねー。」
そう、そして、やめろ、クシャッと満面の笑みで こっちを見るんじゃないよ ルイよ。と静かに 思いながら シオンは 答えた。
「それねー、旅行で泊まったのが、茅葺き宿なんだけどね。そこのオバアちゃん自家製。って、ルイ!もっと オバアちゃんを尊とんで、食べてよ!」
と続けたが、
上半身裸で、漬け物を食べるルイの姿が、つい夏休みの ルイの姿に見えてしまったのがいけない。
あの頃の 子犬は、大型犬になっているのに、うっかり 口元に手を伸ばしてしまった。
ルイも、ルイで、レンに どや顔しているので。敵わないなと シオンは、ちらっと レンを見る。
「シオン、熱いお茶飲みたい、俺に淹れてくれる?」
シオンが予想した通り、レンは、例の口を弓なりにした 笑顔をして、ねだってきた。
仕方なく、
飲み物が用意されている棚で、シオンは ポットのお湯を急須に注ぐ。
「さっき、『通夜振舞いの うどん』って、ここら辺の風習だって、話たじゃない? 実は、ちょこちょこ 似たことをするとこ、あるんだよねー。四国にも 『法事うどん』ってあるんだよ。」
せっかくなので、急須と新しい湯飲み三つごと、シオンはダイニングテーブルに置いて、しゃべる。
「ごっそーさん。しっかし、おまえ、しょーもない事は 知ってるのな。」
急須から、湯飲みに 鮮やかな緑が溜まると、レンの前に シオンは置く。
「ばかすか、オバアちゃんの お漬け物食べた、ルイに言われたくないよねー!」
ルイには、自分で湯飲みにお茶を入れさせる意味で、急須のまま シオンは、ルイの前に置いてやった。
そんな二人のやりとりの中、湯呑みを手に、目を細めながら、
「昔からシオンは、俺らに 色々な話、してくれたよ。それが いつも、面白かったよね。」
レンが シオンに 思い出させる。
ダイニングの灯りが またオレンジさを増したように感じる。
シオンには、夜が 来た気配がする。
「おまえさ、旅行中だって?どこ行ってんの?連れと旅行してたのか?」
それでも、
ルイは、やっぱりルイだ。
リビング ダイニングの灯りが、一瞬 オレンジさを増したように シオンは感じた。
シオンが旅行荷物から出した、入れ物を開く。
そこに、爽やかな 酸っぱい薫りが生まれた。
とたん、ルイは 箸を 白い漬け物に 伸ばした。
「でしょ?旅行先のお宿で、持たせてもらったんだー。ほんと、美味しーの!!」
得意げに、シオンが 三色の漬け物を 一つ一つ、レンとルイの稲荷寿司皿へ乗せる。
半月白、緑に紫ピンク、短冊桃色の三色漬け物は 茅葺き宿でも 食べていた種類だ。
オレンジの灯りの下に
オバアちゃんに 持たされた漬け物。それは、とても優しい味をしているのだ。
すると、 緑に紫ピンクの漬け物を見た レンが
「日野菜だね。」
と、子どもみたいに笑った。
「そう、日野菜と、小蕪。で、ズイキの漬け物。珍しいでしょ?ズイキの漬け物って。日野菜は、最近 よく出るようになったけど。って、あたしらには、定番か!」
日野の郷土野菜。その 日野菜で作った漬け物は、シオンが子どもの頃は、叔母の家でしか 見たことがない代物だった。けれども 最近は 、漬け物専門店で 気軽に買える。
「ズイキ? これ すごいな、癖になっぞ!なあ、 ズイキってなんだ?」
ルイが、目を輝かせて 箸を動かす。その口元に ついた漬け葉を、シオンは指で取って食べながら、
「ほら、芋の茎だよー。ズイキって言うとピンとこないよね。そうそう、お盆野菜とかに 網目の輪切りのやつ、蓮芋あるじゃない?あれもズイキなんだよ。じゅわっとして、不思議な食感だよねー。」
そう、そして、やめろ、クシャッと満面の笑みで こっちを見るんじゃないよ ルイよ。と静かに 思いながら シオンは 答えた。
「それねー、旅行で泊まったのが、茅葺き宿なんだけどね。そこのオバアちゃん自家製。って、ルイ!もっと オバアちゃんを尊とんで、食べてよ!」
と続けたが、
上半身裸で、漬け物を食べるルイの姿が、つい夏休みの ルイの姿に見えてしまったのがいけない。
あの頃の 子犬は、大型犬になっているのに、うっかり 口元に手を伸ばしてしまった。
ルイも、ルイで、レンに どや顔しているので。敵わないなと シオンは、ちらっと レンを見る。
「シオン、熱いお茶飲みたい、俺に淹れてくれる?」
シオンが予想した通り、レンは、例の口を弓なりにした 笑顔をして、ねだってきた。
仕方なく、
飲み物が用意されている棚で、シオンは ポットのお湯を急須に注ぐ。
「さっき、『通夜振舞いの うどん』って、ここら辺の風習だって、話たじゃない? 実は、ちょこちょこ 似たことをするとこ、あるんだよねー。四国にも 『法事うどん』ってあるんだよ。」
せっかくなので、急須と新しい湯飲み三つごと、シオンはダイニングテーブルに置いて、しゃべる。
「ごっそーさん。しっかし、おまえ、しょーもない事は 知ってるのな。」
急須から、湯飲みに 鮮やかな緑が溜まると、レンの前に シオンは置く。
「ばかすか、オバアちゃんの お漬け物食べた、ルイに言われたくないよねー!」
ルイには、自分で湯飲みにお茶を入れさせる意味で、急須のまま シオンは、ルイの前に置いてやった。
そんな二人のやりとりの中、湯呑みを手に、目を細めながら、
「昔からシオンは、俺らに 色々な話、してくれたよ。それが いつも、面白かったよね。」
レンが シオンに 思い出させる。
ダイニングの灯りが またオレンジさを増したように感じる。
シオンには、夜が 来た気配がする。
「おまえさ、旅行中だって?どこ行ってんの?連れと旅行してたのか?」
それでも、
ルイは、やっぱりルイだ。