「ヤーッ!!ちょ、ット! レン! ほんと 服!着てよ!自分んちじゃ!ないんだって!」

あーあー、ムダ!ムダ!、ムダ!ムダー!
そこ! ムダに 色気を 垂れながすなあー!

今日は いったい何回、自分の額に手をやる癖をしただろうか?!
そう、シオンは 顔をしかめまくって唸る。

「ほんっと、裸族 だ・よ・ねっ」

己の額に当てた手を、今度はダイニングテーブルにつけたポーズの シオン。そして、その横を ルイは

「じゃ、フロ、入るわ。」

と頭を掻きながら 、言いつつ 浴室に消えた。

シオンの目の前には、猫のようにタオルを頭に掛けて 片足を腕に抱え ダイニングチェアに座る レン。

「なんで? 今さらじゃない? シオン 」

物凄く、笑顔のレン。

実は、着痩せする 細マッチョだったのかー、てか! ヘソ、ヘソが、見えてる!のが なんとも。とか。

内心は、 レンの体に ときめくような羞恥を抱いたことを、シオンは顔に出ないようにした。

「服、着て! ここ、式場!家じゃない。 式場の人も まだいるでしょ。絶対、驚かれる!」

そんな レンは、今ようやく解った風にして、キョトンとした顔をする。それも、狡いと、シオンは思う。

そうなのだ、ここの男どもは、昔から『裸族』だった。

女の園育ち、3人姉妹のシオンにとって、パンイチで、家をうろうろする 叔父と従兄弟達には、夏休みの間、本当に辟易したものだ。

とにもかくにも、
夏の間は、少女シオンは 実に 、目のやり場に 困まる 生活を 毎年送るしかなかった。
叔父、レン、ルイ。3人の男が パンツ一丁で家のあちこちに 出没しては、そのまま生活しようとする。
叔母は、とうの昔に諦めていた。あの習慣は、南国系出身の叔父ならではだった様だ。

文字通り、目の前を歩く 『パンツ』。シオンは 大袈裟でなく、両手で目を覆い隠して、赤面するも固まって 本当に何も言えなかった。
レンに注意する様になった自分を褒めたい!

「子どもの時は、パンツの膨らみに目がいったけど、、大人になると、なんだか オヘソに色気を 感じもんなのね。
意外だわ、、」

こんな、図々しことも、今のシオンには 吐ける。

「シオン……。口が オモシロイこと 言ってるよ。、、んー、とにかく 服、着ろってことかな。」

リビングの棚に、備え付けられた冷蔵庫を開け、取り出したミネラルウォーターを飲みながら、レンは、昼間に着ていたブラックデニムのボトム等を 掛けていたハンガーから 外す。

ほっと安心した シオンは、ダイニングテーブルに 疲れたようにうつ伏せた。




「今日、後から来た ご婦人?。あの人が、叔母さんを見つけてくれたの?」

シオンは、テーブルに頬を 付けたまま横から顔をレンに向けた。

「ああ。警察から 俺のとこに電話あってね。すぐ、こっち戻って 警察行ったよ。それから 話聞いて。最初に、お袋を見かけないって、気が付いてくれたのが、お隣さん、みたいだね。」

洋服を着たレンが、 和室のテレビでも 付けるか?と、
シオンに聞きながら
教えてくれる。

「今は、テレビ、いいや。みたいの、無いし。、、ねぇ、叔母さん、何か持病って あったの? あのさ、警察って、結局 なんで亡くなったの」



聞いたシオンに、
ちょっと レンは 困った顔をした。

「お袋の持病、かぁ。悪い、本当に 俺、お袋の事、何にも 知らないんだ。親父が亡くなって、俺もルイも家、出ていってて。」
そして
「酷いって思うよ。」
重ねる。

レンの目は、シオンの目と 合わない。
レンは続ける。

「どうも この時期なのに、暖房を使ってなかった みたいなんだ……。死後、1週間は立ってたんだけど……心不全って、解剖の結果には 書かれてたよ。」

そう言って レンは、眼をぎゅっと 閉じた。

「新しい家だって、親父が亡くなった時、俺が お袋に 勧めた。ずっと、あんな 家に住むのが夢だって、聞いてたからさ。」

「うん。そうだね。」

レンの話に、
シオンは ただ頷く。

「電話じゃ、お袋、新しい家で、悠々自適に 好き勝手やってるって、俺には、言ってた。」

「うん。そうかあ。」

レンは、どんな顔で
話てるんだろうか?

「シオンも 見たろ、あの、建てただけの家…。 古い方の家。親父が亡くなった日の まんまだなんだよ。家の時間とまったみたいに。俺、すぐ東京戻ったんだけどさ。わかって、なかった。」

今、どの仕草で レンは、
しゃべってる?

「俺は、お袋のこと、もう ずっと何ひとつ 知らなかったんだよ。ほんと。」

テーブルの表面だけを 見ていた、シオン。
レンに どう言葉をかければ いいのか 思いあぐねるしかない。

黙った ままのシオンと

レンの空間に、

重くて、 密度の濃い 哀しみ?みたいな

何かが ある。

きっと、このまま レンを東京に帰したら
駄目になってしまう……。

シオンは 口を開いた。


「あのね、通夜振舞いで、うどんを 食べるのって、この辺りだけなんだって。」

レンはシオンをみた。

目を赤くしてたんだな。と シオンは思う。

「本当は、、お通夜に お焼香もしないんだって。」

シオンの、レンは続ける。

「けっこう、長く 土葬をしていたしね。」

レンが応えた。


「うん、叔母さんが 子どもの頃まで、土葬だったって。あたしね、本当に 叔母さんにいろいろ 教えてもらったんだよね。細かい、シキタリとか、風習みたいなこととか。」

レンは 喋らない。

「それこそ、叔母さんは、あたしに、子どもの頃から 夏の間にだけど、、仕込んでたんだと思う。」

「だから、あたしが、叔母さんに 伝えてもらった事を 話すよ。」

シオンは、黙ったままの レンの目を 見据えた。

「レン達は、聞いてないかも だけど、 あたし、叔母さんから養子になる話、あったんだよ。きっと、そのつもりで、叔母さんは いてた。だから、」

そう 続けようとした時、

『知ってるって! そんなもん、反対に決まってっだろ! 誰が、おまえの兄なんかなるかよ!』


切り裂くような
ルイの 怒鳴り声に シオンは飛び上がった。

声の主、ルイを見て シオンは

一応、下はジーンズ、履いたんだ。と、思った。

予想通り 焼けて、いい具合の上半身を見せた、ワイルドイケメンが タオルを片肩に掛けて いた。

魔王のように 怒って。