「飲むか?」

どこから持ってきたのか、日本酒の一升瓶とおしゃれなぐいのみグラスが差し出された。
ぐいのみグラスは濃い青色がまだらに散りばめられ、まるで夜空のようなデザインだ。

「まさかこれも…。」

「日本酒はお供え物だが、ぐいのみは私物だ。」

咲耶姫様は悪戯っぽく笑う。

「このぐいのみ、とても綺麗ですね。まるで夜空みたい。」

ぐいのみグラスを手に取っていろんな角度から見てみる。びーどろのようなキラキラと星が散りばめられているようなデザインで、展望台から見た星空を思い起こさせた。

「そうだろう。火の神に作ってもらったお気に入りなのだ。」

「火の神様?」

「まあ、飲むがよい。」

咲耶姫様はぐいのみに日本酒を注ぐと、ぐいっと一気にあおった。私も咲耶姫様に倣ってお供え物の日本酒をありがたくいただく。豊潤な香りが鼻から抜けて、後味がとてもすっきりしていて飲みやすい。お酒に詳しくはないけれど飲むことは好きだ。ちびちびとぐいのみを傾けながら、私は高志への怒りや不満を思い出していた。