瀧 :いきなり唐突で失礼なことですけど…。宮水さんには彼氏さんとかいらっしゃるんですか?
三葉:いきなり唐突で失礼ですね(笑)。いないですよ。(ニッコリ)
瀧 :すごく美人なのに…。あ、いや…。
三葉:男性の方からのお誘いは多少有りますけど…、付き合うには至っていないですね。
三葉:そう、何か運命的な出会いを待っているような…。うーん、中二病の人みたいですね(笑)。
三葉:これ、サヤち…災害後に一緒に上京した幼馴染みの子にもよく突っ込まれるんですけどね。
瀧 :いえ。自分もそんな感じです。俺の方は高校の時以来、女性からのお誘いってのは無いですけど、でもわかる気がします。
三葉:そのサヤちんも、東京に来ているもう一人の私の幼馴染と最近結婚したんです。
三葉:ちなみに、その旦那さんの方は建設会社の一人息子だったんですけど、立花さんとは逆で建設業を継ぎたくなかった人なんですよね。
三葉:後を継ぎたくないけど継ぐしかないみたいな葛藤を、あの彗星が吹き飛ばしてくれたみたいです。
三葉:そのおかげで彼は東京で自分の道を切り開くことが出来たようです。これもまた運命かもしれないですね。
瀧 :運命が色々なことを決めているみたいですね…。!ああ、そうか。ここで宮水さんのことを見かけた時、なぜ、話しかけようと思ったのか、今気づきました。
瀧 :宮水さんが今つけている、その真っ赤な組紐のリボンです。俺がまだ中学生の頃、電車に乗っていた時に知らない女性からそれとよく似た組紐を渡されたんです。
瀧 :自分でもそうした理由がよくわからないんですけど、それをブレスレットにしてしばらく…っていうか結構長い期間身につけていたんです。
瀧 :俺の記憶が確かなら、渡されたのがちょうど彗星落下の直前。失くしてしまったのは、糸守旅行の前後だった気がします。
三葉:不思議ですね。実は彗星の直前、私は生まれてはじめて東京に行った覚えが有るんです。そこでいつも髪につけていた組紐を誰かに渡した記憶も有るんです。
三葉:でも、なぜ行ったのか、なぜ渡したのか、誰に渡したのかについて全く覚えていないんです。
三葉:立花さんが言う女の人が私だったとしたら、私達はその時出会っていたことになりますね。
瀧 :…。組紐を渡してくれた女性が宮水さんだったらすごく良いなって、俺は今思いました。
二人:……。
三葉:それって…、もしかして、私への愛の告白ですか(笑)?
瀧 :え。ああああ…。
三葉:私も組紐を渡した相手が立花さんだったら良いなって思いますよ。(ニッコリ)
三葉:んー、これも縁ですから、LINE交換しませんか?
瀧 :はい。ぜひよろしくお願いします。
三葉:ちょっと待って下さいね…。
(三葉はバッグからiPhoneSEを取り出し、操作を始める。瀧もポケットからiPhone12を取り出す。)
三葉:はい、QRコード読み込んでもらえますか?
瀧 :はい……。大丈夫です。
瀧 :じゃ、メッセージ送りますね。
三葉:はい……。ありがとうございます。
三葉:ん。立花さんって12月1日生まれなんですか?
瀧 :はい。そうですけど…。
三葉:私も12月1日生まれなんです。
瀧 :え、それってすごい偶然ですね。
三葉:そうですね…。
(三葉はベンチから立ち上がり、遠方を眺める。そして瀧の方を振り返る。)
三葉:生まれた日が365×3日離れていることに、人間って何か特別なつながりを想像出来たりする。これってとってもロマンチックなことだと思いませんか?
(瀧は虚を突かれた表情をする。その後、微笑みを浮かべた表情を作る。)
瀧 :はい。宮水さんに特別なつながりを想像してもらえたのが正直とても嬉しいです。
三葉:そんな特別なつながりの人を名字で呼ぶのっておかしくない?瀧くん?
(瀧は再度、一瞬だけ虚を突かれた表情をし、その後照れた表情に変わる。)
瀧 :そうですね、三葉さん…。
三葉:タメ口でもいいよ。(ニッコリ)
瀧 :いえ、年上の方にいきなりは…。
三葉:じゃあ、もっと仲良くなったら、いつかね…。