市役所の交差点を衣笠の方へ折れ、鶴久保の二股を左へ入ると、アップダウンのあと坂を下り切り、自衛隊の交差点を左へ。

「これであとは海岸まっしぐらや」

 国道を長浜海岸の入り口へ曲がるといよいよ潮の香りがしてきた。

「萌々子、海やで」

「うん」

 萌々子はしがみつきながら、慶との一体感を楽しんでいる。

 変電所の角を左。

 分校の校舎を右手に過ごす。

 臨海センターと書かれた建物が見えてくる。

 砂浜が近づいてきた。

 舗装の果てた先には、西陽のキラキラと輝いた相模湾が、悠揚迫らず広がっている。

「慶…ずるい」

「なんで?」

「だって…ずっと、この景色を独り占めしてたわけでしょ?」

「…まあ、鎌倉から近いしやな」

 慶はエンジンを停めた。