「そうだったんだ…」

 軽い気持ちで興味を抱いたことを、萌々子は今さらながら後悔した。

「話がけっこう長くなるから」

 と慶が極楽寺の江ノ電のベンチまで促した理由も、星野美沙が大変だったという真相も、萌々子には少し荷が重く感じられた。

「…それで、のぞみちゃんは?」

「次の日に遺体で見つかったんやけど、損傷がひどくてDNA鑑定になって」

 DNA鑑定ののち、大阪で荼毘に付して慶が横須賀まで持ってきて密葬をあげたあと、藤尾家の菩提寺でもある成就院に納骨した…と慶はいい、

「ま、いつまでもこんなん引きずってたらあかんねんけど、のぞみはかけがえのない存在やったし」

 何よりいい女やったもん、と慶の表情から初めて笑顔がこぼれた。

「結局、そのときの火事の原因とかは…」

「あとから聞いたけど漏電やて」

 でもそんなこまいことは、どうでもえぇねん…と慶は続け、

「例え責任者を問い詰めたところで、のぞみが戻ってきてくれるもんでもないやん」

 いっぽう。

 萌々子は少し沈んでいる。