「やっぱり。──別に何か悪い訳じゃないんだけど、こないだお慶ちゃんを見てた萌々子ちゃんの目、昔の彼女の話をするお慶ちゃんとそっくりで真っ直ぐでね」
そう星野美沙は核心を衝いた。
「お慶さん、おしゃべりだな」
ムスッとして萌々子は頬を膨らませた。
「誤解しないでね。お慶ちゃんは関西人なのに、口が重たいから」
たまたま私があのとき聞こえたの、と続け、
「盗み聞きする気はなかったんだけど、店のベンチのところの窓…そこ、レジだからさ」
見てみるとレジがある。
「ごめんなさいね、聞こえちゃったんだよね…」
頭を下げて謝った。
「そのお詫びって訳じゃないけど、今お慶ちゃん何してるかっていうと、お慶ちゃん亡くなったのぞみちゃんのお墓に行ったんだよね」
「のぞみちゃん?」
「うん、お慶ちゃんの元カノ。詳しくはお慶ちゃんも話してくれないんだけど、なんでも彼女に対して何か忘れられないことがあるって」
「忘れられないこと…?」
萌々子は呟いてみた。
「わざわざ彼女のお墓まで行くぐらいだから、かなり覚えてるってのだけは分かるけどね」
今ごろ成就院じゃないかな、と星野美沙は萌々子に教えた。