座敷を見回すと三味線や、太鼓やら鼓やらの鳴り物や見台が無造作に並んでいる。

 床の間に目をやると、前に慶がディスプレイで作った升鉢のシクラメンが咲いている。

 操が膳を運んできた。

「シクラメン、綺麗に咲かしてますね」

「そう、前は枯らしてばっかりだったんだけど、お慶ちゃんから聞いた育て方で今回は今の時期まで咲いてくれて」

「それはおかみさんが上手やからですって」

 なんぼ説明しても枯らしてまうお客さん、よういてますからねえ、と慶はいい、

「まあ、花屋にすりゃ枯らしたら枯らしたで、また新しいの買うてくれますから儲かるんですが」

 と身も蓋もない物言いをした。

「でも今どきの花って、店によっては買ったらたまに虫がついてたりもあるから、ピンきりになっちゃうんだよねえ」

「あ、最近は売ったら売りっぱなしってところもありますからね」

 慶はいった。