鎌倉高校の電停脇の坂道を上がりきって、モノレール沿いの道を大船へ出ると、鎌倉女子大の交差点を鎌倉街道へ出て、阪東橋の方へ飛ばして行く。

 生まれてはじめて萌々子はバイクにこのとき乗ったのだが、とにかく必死で慶のいかつい胴体にしがみついている。

 上大岡を越えた辺りで雪は止みはじめた。

 加賀町の交差点を石川町の駅へ入る小路に差し掛かる頃には陽射しも出はじめ、冬のやわらかい明るさが戻りはじめている。

 やがて。

 汐汲坂の下まで着くと、

「…間に合うて良かったなあ」

 慶は安堵した様子でバイクを停めた。

 ヘルメットを外すと、

「ありがと」

 萌々子はペコン、と頭を下げた。

「うんにゃ、困ったときにはお互いさんやて」

 慶は意に介する様子もなく、

「ほな、戻るわ」

 萌々子からヘルメットを受け取ると、フックにかけてもと来た坂を下ってゆくのであった。