「…はい、實平です」

「あ、お慶さん?」

「あれ? 今日デートいうてへんかったか?」

「今ね、川崎駅」

「近いやん」

「確か鶴見だったよね?」

「…しゃーないなあ。ほな鎌倉まで送ったるから、鶴見で待っとけ」

 慶が急いで支度を済ませ、ヘルメットを手に外へ出てカバーを外すと、バイクにまたがり、鶴見の本町通を潮見橋から京急の鶴見駅へ出、駐輪場にバイクを停めた。

 降りるとロータリーを走り抜けて、肩を弾ませながら鶴見駅へたどり着いた。

「…萌々子ちゃん」

 改札を出た柱にもたれて、萌々子は待っている。

「ひとまず帰ろか」

 萌々子は黙ってコクッ、と頷いた。

 駐輪場のバイクに萌々子を乗せると、エンジンを吹かした。

 潮鶴橋の北詰を第一京浜に出て、ほとんど正月の箱根の駅伝のようなルートで、遊行寺の坂を藤沢の駅前へ出て鎌倉まで慶はバイクを転がした。