うーん…と萌々子は悩んでいたが、

「それか、誰か他に気になる人がおったら、バレンタイン近いし、当たってみるって手もあるで」

 ちっちゃいアレンジメントぐらいなら予算内で作るで──と慶は、屈託なく笑った。

「そこで商売してくるあたりがお慶さんだよね」

「まあな、バレンタインはうちら花屋からすれば商機やもん」

「…お慶さん彼女は?」

「今はおらんで」

 でも萌々子ちゃんから見ればオッサンやしな、と慶は笑うとベンチを立った。

「そろそろ江ノ電、来るんちゃうかな」

「…お慶さん、ありがと」

 おぅ、と慶は軽く手をかざして後ろ姿で会釈した。