「萌々子は裁縫が上手だねえ」

 そこへ長唄の稽古を終えた操が来た。

「この器用さは死んだ美奈子さんの血だね」

 と操は、萌々子が幼いころ他界した母親の話をした。

「おばあちゃんは?」

「私はいわゆる芸妓さんだったからね、そういうのはからっきし」

 とこの祖母は、歯切れのいい口跡でいった。

「あ、もうすぐ誕生日だよね」

 萌々子は包装した端切れを出し、

「これで今度、プレゼント作るね」

「ありがと」

 萌々子は後片付けをはじめていた。