ところがあるとき。
同じクラスの男子数人が市野瀬くんに突然、こんなことを言い出した。
「お前、普段少女マンガ読んでるだろ。お前が少女マンガを買ってるところを見たんだ」
その日から、市野瀬くんにそう言った数人の男子たちから、からかわれるようになった。
そしてそのことが市野瀬くんの彼女の耳にも入ってしまった。
市野瀬くんは彼女に、普段から少女マンガを読んでいることは言っていなかった。
そしてそのことを知った彼女に「大翔くんとはお付き合いすることはできない」と、きっぱりと言われてしまった。
そして市野瀬くんは思った。
男子が少女マンガを読んでいるということだけで、なんでこんなにもからかわれたり、彼女にフラれたりしなくてはいけないのだと。
こんなことバカらしい。
こんなふざけたことがあってたまるかと。
そう思ったその日から市野瀬くんは変わった。
みんなから、からかわれたり、なめられたりしないように。
そうして今のような市野瀬くんが誕生した。
「だから今でもオレは、全員になめられないように、ああいうふうに振舞っている」
そうだったんだ。
市野瀬くん、すごく辛い思いをしたんだ……。