市野瀬くんが待ち合わせ場所に来てくれた、これは現実なんだよね……?

 そう思った私は、思わず市野瀬くんの顔をじっと見つめた。


「な……なんだよ、人の顔をじろじろ見やがって」


 いつもの市野瀬くんの口調。


 ……市野瀬くんだぁ。

 私の目の前には市野瀬くんがいる。

 市野瀬くんが来てくれた。

 私は、そのことがとても嬉しくなった。

 あまりにも嬉しくて、私の顔は緩んでしまった。


「おはよう、市野瀬くん」


 私は表情が緩んだまま市野瀬くんに挨拶をした。


「な……なんだよ、ニヤニヤして気持ち悪いな」


 市野瀬くんのそんな言葉も今の私にとってはとても嬉しかった。

 なんでこんなにも嬉しいのか私にもよくわからないけど、とにかく嬉しさがこみ上げてくる。


「市野瀬くん、どこに行こうか」


 私は嬉しさが込み上げながら市野瀬くんに訊いた。


「お前の行きたいところでいい」


「いいの?」


「ああ」


 市野瀬くんがそう言ってくれたので、私はどこに行きたいかいろいろ考えた。