一週間後。
いつものように部活が終わって、いつものように加恋ちゃんとの帰り道。
僕は思っていたことがあった。
それは近いうちに加恋ちゃんを連れていきたいところがあるということ。
僕は、さっそく加恋ちゃんにそのことを言おうと思った。
「加恋ちゃん」
「なぁに、優くん」
加恋ちゃんは笑顔で僕の方を見た。
笑顔で僕の方を見た加恋ちゃん、僕がこんなことを言ったら加恋ちゃんは驚くかもしれない……ふとそんなことを思った。
なぜなら……。
「近いうちに僕の家に来ない?」
こんな大胆なことを言ったから。
今までの僕なら女の子には絶対に言えないであろう言葉をサラッと言うことができてしまっているから。
「え……?」
思った通り、加恋ちゃんは少し驚いた様子だった。
だからというわけではないのだけど、僕は加恋ちゃんが少しでも緊張しないようにちゃんと計画は立てている。
「もちろん母さんや父さんや妹がいないときに加恋ちゃんには家に来てもらうつもりだよ」
そのときは家に僕だけしかいないよと言えば、加恋ちゃんも緊張が和らぐのではないかと思った。
「優くん……」
そう思ったけど、まだ緊張感が残っている加恋ちゃん。
きっと加恋ちゃんのことだから遠慮しているというのもあるのだと思う。
だから僕は、
「その方が加恋ちゃんも気を遣わないと思うから」
加恋ちゃんに気を遣ってほしくなくてそう言った。
「……でも……」
加恋ちゃん、まだ遠慮しているのかな……?
加恋ちゃんは少し迷っている表情をしていた。
……‼
それとももしかして……。
「……僕の家に来るの嫌?」
僕は加恋ちゃんにそのことを訊かずにはいられなかった。
「そうじゃないの‼」
加恋ちゃんはそう言って首を横に振った。
そんな加恋ちゃんの様子を見て僕は少し安心した。
「ならいいじゃない」
僕は加恋ちゃんに遠慮しなくて大丈夫だよという気持ちでそう言った。
「優くん……」
僕の気持ちが伝わったのか、加恋ちゃんは少しだけ笑顔に戻った。
「だから、ねっ、加恋ちゃん」
「ありがとう、優くん」
……⁉
「え……そのありがとうは……?」
どういう意味なの⁉ 加恋ちゃん⁉
「お言葉に甘えて優くんのお家におじゃまさせてもらいます」
加恋ちゃん‼
「やったぁ‼ 加恋ちゃんが家に来てくれるー‼」
加恋ちゃんが家に来てくれることが僕はすごく嬉しかった。
「優くん」
僕の様子を見て加恋ちゃんはとても笑顔になっていた。
「それでさっそくなんだけど加恋ちゃん、ちょうど一週間後空いてる?」
僕は嬉しくてどんどん話を進めた。
「うん、空いてるよ」
「その日、母さんも父さんも妹もいないんだ。だからその日に加恋ちゃんのことを招待したいんだ」
「優くんがよければ、その日、おじゃましに行きます」
「やったぁ、じゃあ、その日で決まり」
そうして加恋ちゃんが僕の家に来てくれることが決まった。
初めての招待
8月の下旬。
今日は、ついに加恋ちゃんを家に招待する約束の日。
母さんと父さんは仕事で、妹は友達と遊びに行く約束をしている。
なのでこの日に決まった。
母さんも父さんも妹も、すでに家を出た。
だから家にいるのは僕一人。
僕は一人家にいながら緊張していた。
僕は初めてだった。
女の子を家に招待するのは。
しかも母さんや父さんや妹がいないときに。
家に家族がいるときでもいないときでも加恋ちゃんを家に招待するのは緊張はするけど、わくわくしている気持ちもある。
加恋ちゃんと何を話そうとか、そういうことを考えると楽しくなってくる。
今、僕の心の中は緊張とわくわくした気持ちが混ざっている。
おっ、時間だ。
そろそろ加恋ちゃんを迎えに行く時間がきた。
加恋ちゃんには公園まで来てもらうことになっている。
僕は加恋ちゃんを迎えに公園まで行こうと家を出た。
公園に行く途中も僕は緊張とわくわくしている気持ちが続いていた。
加恋ちゃんと家の中で二人きり、何を話そう……。
そう思えば思うほど緊張とわくわくしている気持ちは増した。
そして公園へ向かいながら僕はこんなことを思っていた。
楽しみにしているという気持ち。
わくわくしているという気持ち。
嬉しい気持ち。
そういう気持ちを感じることができるのは、とても幸せな気持ちになる。
そう思ったら少しでも早く加恋ちゃんのことを家に連れて行きたくなった。
そう思いながら歩いていたら、あっという間に公園に着いた。
公園に着いたら、すぐに加恋ちゃんが見えた。
加恋ちゃんは時計台のところで待っていた。
「加恋ちゃん」
「優くん」
「ごめん、加恋ちゃん、待った?」
「ううん、ちょうど今来たところだよ」
「…………」
僕は、また加恋ちゃんに見とれていた。
かわいい髪飾り。
かわいいブラウス。
かわいいネックレス。
かわいいスカート。
かわいいサンダル。
加恋ちゃんのすべてがかわいい。
僕は加恋ちゃんのすべてに心を奪われていた。
「優くん?」
……‼
僕は加恋ちゃんの声で我に返った。
「どうしたの? 優くん」
大きな目をパチリと開いて僕のことを見ている加恋ちゃん。
「あ……えっと……今日も加恋ちゃんかわいいなと思って」
僕は照れながら加恋ちゃんにそう言った。
「ありがとう、優くん」
加恋ちゃんは今日もとびきりかわいい笑顔を見せた。
僕は、そんな加恋ちゃんの笑顔を見てとろけるような気持ちになった。
「じゃあ、行こうか、加恋ちゃん」
僕は加恋ちゃんの笑顔にとろけるような気持ちになりながら加恋ちゃんにそう言った。
「うん」
加恋ちゃんは笑顔で返事をした。
「加恋ちゃん」
僕は加恋ちゃんに手を差し出した。
「優くん」
僕が手を差し出したのを見て加恋ちゃんも手を差し出してくれた。
そして加恋ちゃんが差し出してくれた手を僕はやさしくつないだ。
僕が加恋ちゃんの手をやさしくつないだ後、加恋ちゃんも僕の手をやさしくつなぎ返してくれた。
* * *
「着いたよ、加恋ちゃん」
家に着いてドアを開け、加恋ちゃんを中に入れた。
加恋ちゃんは「おじゃまします」と言って家の中に入った。
僕は加恋ちゃんを自分の部屋に案内した。
「どうぞ、加恋ちゃん」
僕は部屋のドアを開け、加恋ちゃんを中に通した。
「失礼します」
加恋ちゃんは緊張した様子でとてもかしこまっていた。
「そんなに緊張しなくてもいいよ、加恋ちゃん」
「ありがとう、優くん」
加恋ちゃんは、まだ緊張が残っていた様子だけど、少しだけ笑顔になった。
「僕、下に行って飲み物とか持ってくるから少しだけ待っててね、加恋ちゃん」
「ありがとう、優くん」
僕は、そう言ってダイニングルームに行き、飲み物とクッキーを用意して加恋ちゃんがいる僕の部屋に戻った。
「お待たせ、加恋ちゃん」
僕は、そう言ってテーブルに飲み物とクッキーを置いた。
「ありがとう、優くん」
「加恋ちゃん、のど渇いたでしょ、さあ、どうぞ」
「ありがとう、優くん。いただきます」
そして加恋ちゃんは飲み物を飲み始めた。