それから加恋ちゃんは何も言わずに、僕の腕の中にい続けてくれた。



 しばらくして僕は加恋ちゃんからやさしく離れた。


「……ごめんね、加恋ちゃん……。また加恋ちゃんのことを困らせてしまった……」


「そんなことないよ。優くんの気持ち、とても嬉しかった」


「……加恋ちゃん……」


「わたしも許されるのなら優くんと一緒にどこか遠くへ行ってみたい」


 無邪気な笑顔の加恋ちゃん。


 僕は加恋ちゃんの気持ちがとても嬉しかった。


「……ありがとう、加恋ちゃん」


 本当に本当にありがとう……。


「わたしの方こそありがとう、優くん」


 そして僕と加恋ちゃんは顔を見合わせて笑った。



「じゃあ、また明日ね、優くん」


「うん、また明日ね、加恋ちゃん」


 加恋ちゃんは僕に手を振って前を向いて歩いて行った。


 僕は加恋ちゃんのことを静かに見守った。