人が初めての恋をする時、相手のどこに惹かれるのだろう。

 大部分の人間が幼少期に経験するであろう初恋。

 社会の仕組みも知らず、心身が未成熟なうちにするその恋は、長い時を経るにつれて、誰にとっても過去のものとなる。

 かけっこが他の子よりも速かった。ドッジボールが強かった。髪型が可愛かった。クラスの人気者だった……大人の価値基準からすれば、さほど重要でもない部分が初恋の決め手になることも多い。

 だからこそ、幼かった自分を懐かしみ、その恋を思い出に昇華させる。成長した自分からすれば、当時は焦がれるほどに魅力的に思えた部分が、人生においてはさほど重要ではないことに気が付くからだ。

 長い時を共に過ごし、相手に新たな価値を見いだしたら話は違うだろうが、途中で離ればなれになった場合は致命的だ。なにせ、相手の魅力的だと思っていた部分は、大人になるにつれて無価値へと成り下がってしまうのだから。

 だから、初恋は成就しない。大部分の人たちの中で、ただの思い出で終わる。

 ならば――どうして、叶海は今も雪嗣に惹かれているのか?