「それがね、教会か神前式かで相当悩んでたみたいでね」

「ふーん……」

正直、なあちゃんが結婚するというのは喜ばしい事だとは思うけど、私にはあまり興味が無いし、関係の無い事と思ってしまう。

「あんたも早く良い人見つけて、お母さん達に孫の顔見せてよね?」

そして……
どちらかと言うと、この親から与えられるプレッシャーの方が問題だ。

「お風呂入ってくる」

こういう時は、さっさと親の前から退散するのが得策だろう。

この先、私は果たして結婚なんて出来るのか……
それどころか、このままじゃ恋愛だって出来る気がしない。

湯船に浸かりながら、またそんな事を考えた。

その後、あれ以上のプレッシャーを与えられる事も無く夕飯を無事に済ませ、私の一日もようやく終わりを向かえようとしていた。

ベッドに入ると、スマホで尚子ちゃんにススメられたゲームを寝る前に開いてみた。

「プリンス・オブ・ラバー……どんなゲームなんだろ?」

ゲーム画面をタップしてみると、イケメンの画像と共にタイトルを読みあげるイケボが響く。

どうやら恋愛ゲームのようだ、この手のゲームは初めてする。
そもそも、私はゲーム自体が苦手であまりやる方ではない。

「イベント? ああ、ゲームの中のか……ラクダを追えって……変なの」

とりあえず、自分の名前を登録するとストーリー本編を始めてみた。

画面にはイケメンな男の子と、その下にはハートマークと数字が表記されている。
これが所謂、好感度というヤツか……

数字が高ければ高いほど、このキャラクターが私のキャラクターを好きだという事だ。

「この世界も、みんなそうやって見えればいいのに……」

そうすれば、何がダメだったのか、どうすればもっと好きになってもらえるのかわかるのに。

叶うはずもない様な事を考えて、私はゲームを進めていった。

「このキャラクター石油王って、無理ありまくりでしょ……ヤハヌーン王子」

最初こそそんなにやる気も無かったゲームだったが、ストーリーを読み進めてゆくうちに夢中になって進めてしまい、その日は朝方までプレイしてしまった。

そして──

「────っ!! 今、何時!?」

飛び起きた時には、いつも家を出るギリギリの時間になっていた。

「ヤダっ!! 遅刻しちゃうっ!!」

慌てて、洗面所に向かった。
顔を洗って、コンタクトを……

アレ?
もしかして、コンタクト切らしてた!?