ちょっと、というには語弊がある。

入間主任はカナリ顔が良い。
いや、それどころではない。
昔はファッション雑誌の読書モデルの経験もあるとかいう抜群のルックス。
頭脳明晰で仕事が出来て、海外支店から本社への栄転でウチの部署の主任に着任。

三日に一度は女性社員が告白しては、玉砕しているという噂も聞く。

まさに少女漫画に出て来る様な、イケメンキャラなのだ。

「それにさ、入間のヤツなんか小夜にやたら厳しいし……」

「それは、私が仕事出来ないから」

「だとしても! いくらエリートで見た目良くても、あんな性格じゃ彼女がいたら相当苦労するだろうね!」

「主任だって彼女には優しいかもしれないよ?」

「え~っ、アノ入間が~?」

まあ、アノ主任の恋人なんて、きっと中身も見た目も完璧で、非の打ち所もないだろうから、私みたいに注意される事なんかないだろう。

「あっ、そうだ! それよりさ、小夜もやろうよスマホゲーム」

「ああ、この前言ってたヤツ?」

「そう! 小夜もやってフレンドになってよ」

「う~ん……私ゲーム下手だよ?」

「大丈夫だって! このゲーム簡単だから」

尚子ちゃんは最近スマホのゲームにハマっているらしい。
以前から一緒にやろうと誘われていたのだが、私はイマイチゲームが苦手で断り続けていたのだけど……

(たまには、やってみようかな……)

気まぐれで私は尚子ちゃんと別れた帰りの電車の中、オススメされたスマホゲームをダウンロードした。

地元の駅から自宅までは歩いて10分程度。

今日は寄り道はせずにまっすぐ帰って、ダウンロードしたゲームをしようと思った。

「ただいま~」

「おかえり、お風呂沸いてるわよ」

郊外の一軒家に家族は父と母、それと柴犬のしょうゆの三人と一匹で暮らしている。

「うん、入ってくる」

「ああ、あんたになんか届いてたわよ」

「えっ? なんだろ……」

母から小さなダンボール箱を渡された。
受け取った箱の差出人と品物を確認してみる。

「コンタクトレンズ……」

それは、いつも購入しているコンタクトレンズのショップからだった。
サンプルという文字と、コンタクトという事から試供品か何かだろうか?

「あっ、そうそう! やっぱり6月になったって式」

「式……?」

「なあちゃんの結婚式よ」

「あ、ああ……そうなんだ」

従姉妹のなあちゃんは私と同い年で、昔はよく一緒にミミズを引っ張って遊んだりしたのだが……そのなあちゃんが結婚するとは感慨深いものだ。