「しかも高校生の時の話でしょっ!?」

「小夜ちゃん、もういい加減立ち直って!!」

「…………あ、アハハ……」

その後も二人からは、恋愛するべきだとか恋人と過ごす事の素晴らしさをプレゼンされたけど、私には申し訳ないがあまり響かなかった。

やはり──

私は、未だに引きずっているのだ。

高校の時の事を……
高校二年生になってすぐ、クラスでわりと仲が良かった男の子に私は告白され、付き合った。

私は彼の事が本気で好きになっていった。

だけど、付き合って1ヶ月が過ぎた頃。

突然、彼からフラれたのだ。

理由は……

「思ってたのと違った……」

だった。

私は、何も言えなかった。
何が違っていたのか?
付き合うという事が違ったのか?
それとも私が違ったのか?

何も彼に聞けぬまま、その後はもう卒業まで彼と話す事もほとんど無かった。

それから、私は恋愛が怖くなってしまった。

また「違う」と言われたら、なんて答えればいいのか、どうしたらいいのかわからないから……

「はぁっ……」

昼休みも終わり、午後の業務をしながらそんな事を思い出して思わず嘆息していた。

「長浜!」

そんな憂鬱な気分を更に憂鬱にさせる声が聞こえ、私は条件反射で体を思わずビクつかせる。

「この書類、オマエだよな……」

「はい……」

私はおずおずと声の主である主任の席へと向かう。

「ココとココ、記入漏れあるぞ! 全くオマエいつまでこんなミスするんだ!?」

「すみません……」

「全く、すぐに直して来い」

入間 奏(いるまかなで)主任。
私は彼に目を付けられてしまっている。
ことある事にこっぴどく叱られ、何かというと注意を受けている。

仕事上のミスは私が悪いと思うのだが、それ以外の些細な事でも嫌な顔をされて、正直私は入間主任が苦手だ。

「小夜、大丈夫だった?」

自席に戻ると、隣の席の尚子ちゃんがコソリと耳打ちして来た。

「うん、大丈夫」

正直、今の私はこの主任の事もあり仕事で手一杯。
恋愛などにうつつを抜かしてられないのが現状なのだ。



その日も、ようやく仕事を終えて駅までの道を尚子ちゃんと歩いて帰った。
美里さんは今日も合コンらしい……

「ホントに入間のヤツムカつくよね!」

「しょうがないよ、仕事ミスしたのは私のせいだし」

「でもさ、言い方ってモノがあるでしょっ? アイツ、ちょっと顔がいいからって調子乗ってんだよ」