「視察は?」
「してるよ~……社食のメニューを、写真と実物があまりに違ったらすぐに指摘する!」
「そういう視察……じゃなくて、もっと会社の中を」
「長浜さんは真面目だね!」
「えっ……?」
君島さんはぐっと身を乗り出して、私の顔をジっと見つめた。
「ねね、それよりさ長浜さんって奏とどういう関係なの?」
「ど、どういうって……」
私は昨日の事を思い出し、なんと返すのが正解か戸惑ってしまう。
「付き合って……はいないよね」
「えっ!? 当たり前です!!」
「ふーん……」
君島さんはニヤリと笑った。
まるで何か企んでいるような顔……
「そろそろ、出ようか?」
「えっ? サバの味噌煮はいいんですか?」
「それはまた後で……」
再び私の手を引いた君島さんは、上機嫌でエレベーターに乗り込むと最上階のボタンを押した。
「ここの屋上好きなんだよね……」
到着と同時に扉が開く。
ウチの会社の屋上は庭園の様になっていて、そういえば屋上をこういう内装にしたのは副社長だと聞いた事がある。
「会社って息が詰まるんだよね~」
君島さんは大きく伸びをすると、ベンチの方へと歩いて行き腰を下ろした。
私もその後に続き、少し距離を取ってベンチに座った。
「ねぇ、長浜さん」
「はい……」
「長浜さんって、彼氏いるの?」
「……な、何です? 急に……」
「僕とさ、付き合ってよ」
「えっ……? はっ??」
私の脳内は真っ白になった、何故なら──
先程から見えてる君島さんの私への好感度は……
20……
つまり、その辺にいる人と変わらない。
「僕、キミに一目惚れしちゃったんだよね~」
君島さんは、ウソをついている。
それが何故かは、わからない。
でも、好きでもない私にそんな事言うとか……
からかってるのだろうか?
「冗談やめて下さい」
私は苦笑いで答えた。
「冗談? いや、本気だけど……」
私は何が何やらさっぱりわからなくなった。
好感度はやはり20。
君島さんの目的がわからない。
「付き合ってよ……」
私は黙っていた。
ここで返事をしたら、「な~んて冗談!」と君島さんが言うのを待った。
しかし……
待ち望んだ答えと、全く違う答えが彼から来たのだ。
「キミが付き合ってくれないなら……奏をどこか地方の支社に飛ばすかも」
「えっ……!? 入間さんを」