「それで……なかなか誰かを好きになる事が出来なくなってるんです」

私は、また傷つくのが怖いのだ。
好きになった人に、また飽きられてしまうのが……

「……そっか、でも無理して好きになんてならなくてもいいんじゃない?」

「えっ……?」

入間さんはメガネを外して、私の目を見つめた。

「だって、僕だって好きになろうと思って長浜を好きになったワケじゃないよ? 好きになるって、努力してなるものじゃないし……」

「入間さん……」

「確かに、長浜に好きになって貰えたら嬉しいけど……でも、僕は長浜が辛い思いをしたり嫌な思いをする方が自分が嫌だって、このメガネで気づいたんだ……」

そうか、入間さんは選択肢に従っただけじゃなくて明らかに数値で好感度を見た事で、自分が好きな人に嫌われる事をしてそれが反映される所をメガネで見てしまったんだ。

「僕は今まで好きな人に嫌われる様な事ばかりして来てて、自分でもダメだってわかってたのになかなか治せなかった……でも、長浜のその好感度見た時に自分が悪いとはわかってたけど、ショックだったんだ……」

ショック療法、というやつだ。
こういうのは反作用して余計に悪化する場合もありそうだけど、入間さんの場合は上手くいったという事なのだろう。

「だから……まだ僕はきっと恋愛初心者で、長浜に好きになってもらうなんて、夢のまた夢かもしれないし……無理かもしれないけど……今度はちゃんと好きな人に対する態度で自分から頑張ってみようと思う」

そう言って優しく微笑んだ彼に、私はドキリとした。
それは久しぶりの、もう名前すらおぼろげな感覚。

「もっと長浜の事、教えてくれないかな?」

私は、出来る限り笑顔で答えた。
今気を抜いたら、顔を紅潮させてすぐに俯いてしまいそうだったから……
悟られない様に必死になった。

恋はするモノじゃなくて、落ちるものだって聞いたけど、今日ほどこの言葉に実感を覚えた事は無い。

多分、今入間さんがメガネをかけていたら……

きっと、私の好感度はとんでも無い数字になっている事だろう。

暴落していた株価は、急上昇で上がっているはずだ。

好感度を知られない事にホッとしつつ、私は入間さんと色々な話をした。

お互いの話をちゃんとするのは初めてで、私は今まで知らなかった入間さんを知る事が出来たし、入間さんの知らなかった私の話をする事で私を知ってもらいながら、好感度チェックを怠らなかった。

その日、彼の好感度が下がる事は無かった。