「まずは……共通の趣味の話題で盛り上がるとかどうでしょうか?」

植物園を後にした私と入間さんは、近くの喫茶店に来ていた。

「共通の趣味か……」

二人で私の好感度を上げる作戦会議だ。
……落ち着いて考えると妙な話だが、それが事実なので仕方が無い。

自分で自分の好感度を上げるなんて、考えた事も無かったけど……

でも、さすがに2とか5はいくらなんでも、例え今までの事があったとしても入間さんが可哀想だ。

「長浜の趣味は?」

「えっ……? う~ん……」

改めてこう聞かれると私には趣味らしい趣味がない様な気がする、そしてなんだかちょっとお見合いみたいだなと、この状況の方に気を取られてしまった。

「入間さんは?」

「僕は、植物園や動物園に行ったり……後は料理とかかな……」

「料理ですか!? スゴい!」

「いや、ウチは両親が共働きで忙しくて、毎日妹と自分の分を作っていたから、何となく身についてて……」

「そうだったんですね……あっ、得意料理はなんですか?」

「そうだな、カレーとか? ルーからオリジナルで作るんだよ」

「えっ!? スゴいですね、私カレー大好きです」

「じゃあ、今度作ってご馳走するよ」

「はい!」

コレは……
コレはとても良い会話だと思う。

自然に会話が弾んだ感じがするし、料理上手な男子は人気も高い。
私にもきっと好感触だったはず、何より私自身の体感では、もうわりと入間さんに今までの様な嫌悪感を抱いていない。

きっと、これなら好感度アップ間違い無しだ。

「あの、入間さん私の好感度どうです?」

入間さんは私の頭の横をじっと見て、ホッとした様な顔をした。

「大丈夫だよ」

「上がりました?」

「いや、下がっていない、5のままだね」

私っ────!!
えっ? どんだけっ!?
どんだけ私って人に好意を抱かない人間なんだ?

いや、昔はもっと……
そう昔は……

「やっぱり……」

私はポツリと呟いていた。

「やっぱり?」

心配そうな顔で入間さんは私の顔を見ていた。

「私、その……昔ちょっと恋愛でトラウマがあって……」

向こうから好意をいくら寄せられてても、付き合って本当の私を知ったら……
そう、みんな私から離れてく。

そんな、どうしようもない不安。

それがある限り、もう誰かを好きになる事は止めようと……
私は誰かに好意を持つ事を、自分で自分に禁止にしている。