なぜ突然、眼鏡の話?
私にはそれがなんの関係があるのか皆目見当もつかなかったが、黙って入間さんの話しを聞く事にした。
「……信じてもらえないかもしれないが……この眼鏡……人の好感度が見えるんだ……」
────!?
私は、あまりの事に声を出しそうになった。
「ウソみたいな話だよね……長浜がたまににかけてた眼鏡がその……気になってて……自宅用に買ったんだよ」
私のこのコンタクトも、何を隠そうその店からサンプルで送られて来たものだ。
という事は……この現象の原因はアノ店の商品という事なのかもしれない。
「それでその時、新機能のあるレンズに無料で出来るって言われて……それで、メガネをかけたら……恋愛ゲームとかである好感度が見える様になって……って、あっ! 恋愛ゲームっていうのは……ごめんこんな事急に言われてもワケわかんないよな、僕もワケがわからないんだ」
私も、全くワケがわからない状況です。
けれどそう言うか言わないか、私は悩んだ。
もしかしたら私が話した事で、この状況の彼を更に混乱させる事になるかもしれない。
今のこの目の前でしゃがみこみ頭を抱えて悩んでいる主任を見たら、追い討ちをかけてしまう可能性があるように思えたからだ。
私が言う事で、自分がおかしかったワケでは無かったという安心感を得る事もあるかもしれないが、私にも好感度が見えているという事は、入間さんの私への好感度も告白する前からバレていた事になる……
それは余りにも気恥しい事なのではないかと、私だったらもうパニックになると思う。
とりあえず、今は話す事はやめておこう。
でも……
「信じます」
それだけは、伝えておこうと思った。
「ほ、ホントに……?」
入間さんは絶望から救われた様な表情で、私を見つめた。
そして──
「良かった……」
と、恐らく私の好感度の数字を見て言った。
それもそうだ。
普通ならこんなワケのわからない事を言われたら、思わず引いてしまい数字も下がっている事だろう。
しかし、まさか入間さんまで好感度が見えていたなんて……
と、なると──
私はふと、もしかしてアノ選択肢も見えていて、主任は選択肢通りに現在行動しており、それによって私にもいつもと違った態度なのかもしれないという仮説を立ててみた。
聞きたいけれどそれを聞く事は、私も好感度が見えている事を言わなければならなくなる。
私は聞きたいのをグッと堪えた。