やはり、ゲームと現実は違うのか……。
「はぁ~~~っ……」
私はしばらく一人、残業しながらこれからどうするべきかを考えていた。
そういえば、倒れて起きた時にはアノ選択肢が消えていたけど……
結局、何も返事をしなかった事に気づく。
(も、もしかしたらっ!)
やっぱり、アレは夢だったのかもしれない!!
睡眠不足と疲労が重なって見てしまった、夢。
だってその方がしっくり来る。
雨の中一緒に走ったのも、全部白昼夢!
アノ、仕事の鬼で私に誰よりもキツくツラく当たって来た主任が……
私を好きなワケがない!
私はそう考え一人納得した。
あと少しの仕事をとっとと片付けて帰って、今日は早く寝る。
それがこのおかしな状況から解放される近道だろう。
「……まだ、残ってたのか?」
聞き覚えのあるトーンの低い声。
振り返らなくてもわかる、入間主任だ。
「あっ、はい! もう終わります、すみません」
いつもならきっと、主任ならココで……
「まだそんな仕事も終わらないのか!? 全くお前というヤツはこれだから」
という、説教というか嫌味を言われるとこなのだが……
「…………そうか」
主任はそう言ったきり、黙り込んでしまった。
なんだか、いつもとはやはり違う。
私は気にしない様に、仕事の続きをしようとパソコンのキーボードを打った。
「……………………」
背後に、気配を感じる。
何も言わないが、主任は私の背後に確かにいる。
それでもなんとか無視を決め込み、私はキーボードを打ち続けた。
「………………」
気にならないといえばウソになる。
というか、めちゃくちゃ気になる!
いつもみたいに嫌味を言いたいなら言えばいいし、アノ嫌な説教がこれほど恋しくなる日が来ようとは思わなかった。
「………………」
未だ、主任は沈黙を貫いていた。
さすがの私も限界が来て、そのまま椅子ごと振り返り主任の方を向いた。
「アノっ! 何か……言いたい……」
しかし、私はそこで口ごもってしまう。
何故なら、目の前に驚きの光景があったからだ。
「あの……主任……?」
主任は何故か、ハラハラと涙を零していた。
男性が、しかもいつも強気でプライドが高い主任が人前で泣くなんて……
更に、あまりにもその泣き顔が綺麗だったので、私はしばらくその顔を見つめてしまった。
「あっ、アノ……主任? どうかなさいましたか?」
主任は私の問いかけにはっとなり、袖で涙をゴシゴシと拭った。
「……すまない、カッコ悪いトコロを見せて」